家づくりに情熱を注ぐフランス人
Les Français se passionnent pour leur nid
目次:
自分で家を建ててしまう人たち

 近所の家のご主人が、この春から自分で家を建てています。今住んでいる家が狭くなったので、近くに土地を買ったのです。もう土台ができあがって、ブロックを積んだ壁が立ち上がりました。2階建てにするのは難しいので、広い面積を使って平屋建てにするのだそうです。

 大工さんに頼まないで自分で家を建ててしまうという例は、私が見たのは3軒目です。

 例えば右の写真。ワイン用のブドウを栽培している若い夫妻が、親戚の人にも手伝ってもらって建てた家です。地下室をつくってからは、そこを家にして、キャンプのように寝泊りしながら工事を続けたそうです。


古い石造りの家を修復して住む人たち

 家を建てるのは珍しい例です。と言うのも、フランス人は古い石造りの家に住むのが好きなので、家を自分で建ててしまえるくらいの腕があれば、100年以上前に建てられた家を買って工事して住むからです。

 ほとんど壁しか残っていないような廃屋を買って修復する人もいます。

 廃屋というのは、例えば右の写真のような家です。こんな家は、売値は安いとしても、修復するには膨大な費用がかかります。新築するよりも遙かにお金がかかることは明らかです。

 歴史的には価値があっても、手の施しようもなく壊れてしまった城や修道院などの修復に財産をつぎ込んでいる人たちもたくさんいます。


 
 古い石造りの家を修復するのは、想像以上に大変なことです現代のフランスでは、セントラルヒーティングにするのが当たり前ですから、温水の配管もしなければなりません。

 左の写真は壁の工事をしている最中のもの。電気、水道、セントラルヒーティングの配管は、石の中を通さなければならないのをお見せしたいので入れました。青い管が配管です。

 壁の外側に配管すればある程度は仕事が楽になりますが、見た目をよくするためには、石を砕いて配管を石の中に組み入れます。石をノミでコツコツ叩いて場所をつくるのですから、全く原始的な作業になります。


 
4百年前に建てられた農家の廃屋を買った友人

 古い家を買っても業者に頼んで修復できますが、普通のサラリーマン程度の収入だと、できる限りのことは自分で工事します。「できる限りのこと」と言っても、かなりのところまでやってしまいます。

 数年前の夏、赤ちゃんが生まれた友人がいたので、近くを通りかかったときに遊びに行ってみました。教えられていた住所の家はご主人が修復工事をしていて、奥さんと赤ちゃんは近くに借りた貸し別荘型民宿にいました。

 ご主人の方は上半身はだかでセメントまみれになっていて、赤ちゃんを抱いた奥さんの方は涼しい顔をして私たちを迎えてくれました。なんだか小鳥が巣をつくっているようで、とても愛らしい光景だと思ってしまいました。

 左の写真は、17世紀初頭に建てられた農家の廃屋を買った友人。パリ近郊で働いていますが、老後は生まれ故郷に住みたいと、小さな村に家を買ったのです。

 家の価格が500万円くらいだったと聞いた友人たちは、みんな「ぼられたのだ!」と口をそろえて言いました。

 みごとな廃屋なのです! 電気も水道も下水も通っていません。屋根はあるものの、葺き替えなければならない状態。家の中もかなり痛んでいます。庭も荒れ放題…。

 でも16世紀の建物というのは価値があるし、庭には昔のハト小屋も残っているし、暖炉もある、石でできた階段も見事、台所にはチーズをつくっていたコーナーもある・・・と、魅力もある家だったのです。と言ってもフランスには魅力的な古い家がたくさんあるので、私たちには逃して惜しいような物件には見えませんでした。

 彼は学校の先生をしていて休みが長いので修復できるので、定年退職したら夫婦で住めるまでになれば良いと思っているのだ、などと呑気なことを言っています。

 写真に写っているはダイニングルームになる部屋です。この後、平らになっていなかった床の石を全部はがして、土台を固めてから石を並べ直したそうです。古い教会の床の石のような立派なもので、それが古い家の魅力であります。でもの厚さは10センチくらいありますから大変な重さです。どうやって動かしたのか分かりません。

 凍てつく寒さの冬に見に行ったときには、彼は庭にいて、一つ一つ外した天井を支えている木を削って整えていました。まだ水道も電気も通っていないときのことです。そこまでするの?… と呆れてしまいました。

 そのほか、屋根を葺き替えたそうです。庭に下水処理場もつくられました。フランスでは汲み取り式トイレは許可されませんので、下水処理場がない村では個人が処理施設をつくらなければならないのです。数年したら、欧州連合の規則で、フランスのすべての村には下水処理場ができるはずなのに・・・。草ボウボウだった庭の地ならしも済みました。屋根裏の修復は済んだとのこと。水道も引けたそうなので、後は電気や暖房の工事。屋内外の壁をきれいにする工事があります。

 ともかく、話しを聞いていると気が遠くなります…。


フランス人は家を修復するのが好きなのか?

 廃屋を買った友人のような話しは、悪い言い方をしてしまえば、フランスでは履いて捨てるほどあります。痛みがひどかった重要文化財の城などを買って修復する、などと話しでない限りはニュースにもなりません。

 家の修復をしている人たちを見るにつけ、フランス人は古い家を直すのがよほど好きなのではないかと思ってしまいます。

 何も工事しなくても住める状態になっていた石造りの家を買った友人に聞いて見ると、次のように答えていました。

 工事をしなければならないような家は、銀行ローンを使わないか、少ないローンで買える。その後に、生活費から切り出した資金で工事をしていけば良い。従って銀行の利子が節約できる。つまり、経済的な理由で廃屋を買うのだと言うのです。

 でも廃屋を買った友人の例をみると、家の価格に屋根の修理費を足せば、もう19世紀に建てられて住める状態の家を買えてしまうのです。

 私は、フランス人は家を修復するのが「好きなのだ」と思えてなりません。

 石造りの家は頑丈だといっても、積み上げた石がくずれてきたりしたら修復しなければなりません。古い家は、何かしら修理をするところがでてきます。夏休みなどには、フランス人の友人たちはみんな、何かしら修理をしているような感じがします。

 
フランス人は日曜大工が好きなのか、仕方がないからしているだけなのか?…

それを調べて、こちらのページに書きました。
作成: 2003年8月


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