パリを流れるセーヌ河はブルゴーニュから発する
Paris a sa source en Bourgonge

セーヌ河の源泉がある公園
「田舎に住んでいる」と言うと会話が止まる日本

日本人に「フランスに住んでいます」と言うと、たいてい「パリですか。いいですね」と言われます。フランスはパリだけではない、とは思ってしまうのですが、外国人を見ればアメリカ人だと思うのと同じ発想でしょうから、文句は言えません。

ところが、「いいえ、田舎に住んでいます」と答えると、何か悪いことを聞いてしまったような反応をされるのがほとんどなので驚きます。さすがに、パリでなければフランスに住んでいても意味はない、とまでは言われたことはありませんが・・・。ワイン通の方だけが、「ブルゴーニュに住んでいらっしゃるのですか!」と羨望の目を向けてくださるだけ。つくづく日本は田舎のイメージが悪いのだな・・・、と感じています。

対象的なのは、初対面のフランス人に「ブルゴーニュに住んでいます」と言ったときの反応。「ええ?! ブルゴーニュ?!」という顔をされて、私はラッキーだと言ってくれます。

ブルゴーニュは食道楽の地方として知られています。質の高いワインができる産地であるだけでなく、その農業が盛んなので農産物に恵まれています。郷土料理にも有名なものがあります。そんな所に住めるのはラッキーだ、というわけです。もっとも、フランス人は田舎に住むことにあこがれますから、どんな田舎でも、パリに住んでいる人たちなどからは羨ましがられる反応を示されるだろうとは思いますが。

フランスの何処に住んでいてもお国自慢があります。でも、他の地方に住む人たちからも一目置かれてしまうところにブルゴーニュのすごさがあります。中には余り良く思われない地方もあるのです。工業化してしまっていて美しくない地方とか、戦争で破壊されて歴史的建造物が残っていないとか、気質が悪いなどという評判がある地方があります。申し訳ないので、地方の名前はあげませんが!

それでも本人が故郷を愛するなら、他の人からどう言われようと構わないことです。でも、「ブルゴーニュに住んで住んでいるのですか?! あなたはラッキーですね!」と言われれば嬉しくなってしまうものです。


パリに観光客が訪れるのはブルゴーニュがあったから?

どの地方にも郷土愛があるものですが、ブルゴーニュは特に郷土愛が強い地方です。生き字引のような私の友人が言うことを聞いてください。もちろん、おふざけで言っていることなのですが、事実ではあります。

「パリ? どうってことないよ。パリの観光名所はブルゴーニュのおかげで生まれたのだから!」

その理由としてたくさん並べていたのですが、思い出すのは次の点。
  • エッフェル塔をつくったギュスターヴ・エッフェル氏はブルゴーニュの人である
  • サクレクール寺院の石はブルゴーニュから切り出された
  • ルーブル美術館につくられたピラミッドの石もブルゴーニュから切り出された
  • セーヌ河はブルゴーニュで生まれた水が流れている
  • パリを訪れる観光客はカメラを持っているが、写真のガラス感光法を考案したニエプス・ド・サン・ヴィクトールはブルゴーニュの人である
ということがあったとしても、ブルゴーニュがなかったらパリはなかった、とうまでにはならないのは自明なことです。でも私は郷土自慢を聞くのが好きです。東京という、「故郷」という感覚を持てないところが私の故郷だからでしょう。日本人にとっての故郷のイメージは、裏山があって、柿の木があって・・・という風景なのだと聞いたことがありますが、フランスにいるときに私が思い浮かべる東京には美しさが全くないので寂しくなります!・・・

それにしても、日本の地方で、こんなことを言う人はいるでしょうか? フランス革命200年祭のときには、ブルゴーニュ地方圏議会は『世界を変えたブルゴーニュ地方人たち −サイエンスとテクノロジーにおける科学革命』などという小冊子を発行する後援もしていました。


ひっそりとしたセーヌ河の源泉

雨が多くて外出する気にもならない冬、珍しく晴れたのでセーヌ河の源泉に行くことにしました。寒い冬に遊びに行くような場所ではないのですが、近くに住む友人の家を訪れる用事もあったので、ついでに立ち寄ってみることにしたのです。

セーヌ河となる水が湧き出ている洞窟には女神の彫像があって、そこから始まる小川がチョロチョロと流れています。
セーヌの女神像
セーヌ河にかかる一番初めの橋も、
人間が一人で渡る程度の幅で、かわしらしいものです!
やはりパリ市はセーヌ河にこだわりがあるらしく、この泉が湧き出る洞窟がある場所がある公園はパリ市のものとなっています。

あの有名なセーヌ河の源泉! と言えば、日本なら観光地になっても良いかも知れませんが、いつ行っても余り人を見かけません。

ここから森の中を散策するコースもあるので、グリーン・ツーリズムで来るには適している場所です。でも観光バスでセーヌ河の水源を見に来る、というほどのことはないでしょう。女神様の彫刻を見るために来るには、ちょっと不便な場所にあります。ついでに行くような観光スポットがすぐ近くにはないのです。

観光に荒らされないのは嬉しいことです。このひっそりとした空間が私は好きです。

それでも、いつの間にか、公園の入り口にはツーリストオフィスの小屋がつくられていました。その前にはピクニック用のテーブルがいくつも設置させています。でも冬なので、ツーリストオフィスの小屋も閉ざされているし、誰もいないし、寂しいものでした。

夏には涼みに来るのに良い場所だった、というのを思い出しました。水があるし、窪みになった土地だし、木々で日陰になっているので、ここはヒンヤリしているのです。さっきまでは日差しが暑いほどだったので薄着になっていたのに、ゾクゾクしてきました。結局、目的地にはしたものの長居はできませんでした。

何年か前の春に来たときには、大きなエスカルゴがいるので驚きました。食欲をそそるような丸々と太ったエスカルゴ。ブルゴーニュの特産品です。湿った土地なのでエスカルゴも幸せなのでしょうか。これほどおいしそうに見えたエスカルゴは初めてでした。でも、まだエスカルゴの解禁前だったのであきらめたのを思い出します。
作成: 2005年1月
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