フランスでは半分近くの家庭にネコか犬が住んでいます。フランスでのペット事情として、なぜ最近では犬よりもネコの数が多くなったのか、フランス人がペットと暮らす理由、フランス人のペットに対する愛情、犬の公害問題などを紹介します。


フランスの家庭で生活するネコと犬

 フランスでもペットの代表は犬とネコ。犬がいる家庭の割合は28%、ネコがいる家庭は26%。犬かネコがいる、あるいは両方いる、という家庭は45%にもなります。

 人口と世帯数の増加によって、フランスのネコと犬の数も増加しました。現在では、合計1,750匹がフランスの家庭で生活しています。人間3人か4人にネコか犬がお相手している、ということになります。

 フランスは、ペットとして飼われている犬とネコの数ではヨーロッパ第一を誇っています。フランスに続くのは、イギリス(1,400万匹)、イタリア(1,200匹)。ただし人間の数との比率から言えば、ベルギーには負けてしまい、アイルランドと同じ、ということになります。

 ネコと犬の半分くらいは人口2万人未満の町村に住んでいます。人間はパリに集中して住んでいるのですが、ネコは11%、犬は8%に過ぎません。

 やはり庭付きの家に住んでいる人がペットを持つ割合は高く、こういう家では、77%の家庭が犬、70%がネコと暮らしています。しかし収入が多い家がペットを持つ傾向にある、という関係は全然ありません。


犬を追いこしたネコ!

 フランスでは犬をペットにする家が多かったのですが、1990年代から逆転して、数の上では犬よりもネコの数の方が多くなりました。

 犬がネコに場所を譲ったのは、都市に人口が移動して庭付きの家を持つ人が少なくなったことに原因があると思われます。それに、人々の生活のリズムが変わって、犬の世話ができなくなったことこともあげられるでしょう。犬は散歩させなければならないのですが、その時間がない。それに、都会では散歩する犬が落とす糞に対して風あたりが強くなってきたことも理由かも知れません。

 そうなると、独立心のあるネコをペットにする方が簡単。それにネコの方が食費も安いというメリットもあります。

 それでもネコが好きか、犬が好きかというのは、家にスペースがあるか、とかお金持ちかで決められているのではありません。ネコは自由と独立のシンボルであるということから、職業によってネコを好むという傾向が見られます。教職につく人々、公務員、インテリ階層はネコを好む傾向があります。犬の方には、財産と人間を守る、従順というイメージがあります。商業を営む人、職人、警察官、軍人などに好まれる傾向があります。

 ちなみに、フランスの家庭に住んでいるネコの9割は雑種。家から一歩も外に出たことがないネコの割合は、3匹に1匹となっています。


なぜペットと暮らすか?

 犬は番犬、ネコはネズミとり、という昔ながらの考えを持つ人がいなくなったわけではないのですが、最近では、そんな打算的な目的ではなく、ペットが好きだから一緒に暮らすという人が多くなりました。

フランス人がペットを持つ主な動機 (%)
小鳥 ウサギ、ネズミなど
 動物に対する愛情のため 67 71 61 33 46
 一緒にいる仲間を持つため 59 50 37 10 25
 子どものため 29 33 30 48 73
 美しさのため 1 3 8 37 4
 番をさせるため 22 - - - -
 ネズミを退けるため - 21 - - -

ペット数 (匹) 880万 970万 800万 2,800万 230万
 * フランスの人口は日本の約半分ですから、日本だったらペット数はこの倍いるとイメージしてください。

子どものように大切にされているペット

 フランスではペットを購入するために、1年間に15億ユーロが使われていると言われています。ペットの食費、アクセサリー、治療費などのための出費が30億ユーロ近く。つまりフランス人は、ペットのために年間約6千億円も支出しているそうです。本当かな? と思ってしまうほどすごい数字・・・。

 ペットの食費は、6割が工場生産の餌。25%は生鮮食品(肉、魚など)、15%は食事の残り物となっています。なおフランスでは、ドライフードは1980年代の始めに市場に現れました。

 家庭のペットのための平均支出は、1年間で、犬には140ユーロ、ネコには100ユーロ。支出額は1975年と1995年の間に15倍にも増加しましたが、ヨーロッパでトップになっているイギリスには追いついていません。

 ペットの生活環境は、人間の生活環境とともに向上しました。ネコや犬の食べ物もグルメになっています。ミトネという料理(弱火でコトコト煮た料理)が人気を呼んでいます。食事も、食事時間以外でもあげてしまう。そのためか、ネコも、4匹に1匹は体重オーバーになっています。

 店でも、ペットのための「衛生・美容」コーナーが充実しています。もちろん、ネコや犬のための香水もアクセサリーもあります。ネコや犬のためのレストラン、精神科医、さらにはミサまで用意されています。

フランス人のペットに対する愛情表現 (%)
クリスマスや誕生日にプレゼントをもらう 32 23
家の人から話しかけられる 89 85

ペット公害 ?!

 パリに旅行したことがある方は、犬の糞に驚かなかったでしょうか? パリには2万匹くらい犬が住んでいますが、たいていはアパルトマンに住んでいるので、散歩に出る必要があります。

 彼らが2,700キロある歩道を散歩するときに落とす糞は、1年間で10トンくらいにもなります! これで滑って入院する人が年に何百人もいるそうです。

 犬の糞をフンづけて不愉快は思いをする人が数えきれないほどいたからでしょう。犬の糞をフンづけると、「今日は運がいい」などという変な迷信みたいのまでできていました!

 長いこと「なんとかしなければ・・・」と言われていたのですが、最近になって、やっと対策がとられるようになりました。

 パリには犬の糞を掃除する専用の車もあったのですが、それでは収拾しきれないし、お金もたくさんかかる。それで大きな町では、犬を散歩させる人のために犬の糞専用のゴミ箱が設置されるようになりました。ちゃんとビニール袋も取り出せるようになっています。

 公園の隅っこに犬のトイレ(砂場のようなものですが)があったりもします。犬を散歩させる人が糞を放置すると、罰金を取るなどということも聞いたことがあります。

 努力のかいあってか、犬の糞を放置するのはよくない、という認識になってきたようです。都会の歩道の上の糞は、めだって減ってきたそうです。田舎の方は変化がないようですが、庭があって散歩にでる必要がない犬も多いので良いのでしょう・・・。

 犬はペットとしてはネコより問題が多いようです。人間が犬に噛まれるという事故も年間に50万件もあって(半分は15歳以下の子ども)、犠牲者の1割は入院するほどのケガになっています。

犬の糞専用ゴミ箱


 やはりペットはネコにした方が良いのではないか、というのが「ネコのおしゃべり」編集部の一致した意見です。


* 使用したデータ: FACCO/Sofres, 2002   参考文献: FRANCOSCOPIE 2005, LAROUSSE


ミュージアム目次へ

総合目次へ 「ネコのおしゃべり」トップページへ