野原の白百合

仏語名: Phalangère à fleurs de lys
学名: Anthericum liliago
科属名:  アンセリカム属 ユリ科 
ワインをつくるブドウの畑が、ほんの少し場所が違うだけで畑の土が変わってしまって、ワインの味も全く異なるのが理解できます。花を探していても同じことだからです。

ほとんど同じようなところなのに、他では咲いていない花が見られたりするときには感激します。先日のこと。通ったことがない野原に行くと、その一帯だけ変わった土なのだというのが分かりました。

スンと伸びた白い花が草原にたくさん咲いていました。背の高さは50センチくらい。

かなり昔、フランスの野原に咲いていた白い花がきれいだと思って、たくさん摘んで花束にして喜んだのを思い出しました。そのときは失敗。何だか臭い・・・、気になりだすと、耐え切れないくらい臭いのです。

友達に、「それは野生のニンニクよ」と言われて笑われてしまいました。そんな臭い花で花束をつくるのは愚かだったのでした! 家の中などには飾っておけません。

それで、この花が咲いているのを見たときも、ニンニクだと思って通り過ぎようかと思いました。でも気になったので匂いを嗅いでみると、何も匂いません。

とりあえず写真をとり、見本の花を少し持ち帰りました。


Phalangère à fleurs de lys (Anthericum liliago)
植物図鑑で調べてみると、「Phalangère à fleurs de lys」という名前がついた植物であることが分かりました。

fleurs de lys」とは、ユリの花のこと。


普通のユリとは似ても似つかない花ですが、野生の百合と言われると価値を感じてしまいます!

フランスでは「fleurs de lys」という言葉には特別の意味があるのです。

「fleur de lys( 百合の花)」という表現は、マリア様に受胎告知をするために来た天使が持っていた百合の花で、それがデザイン化されてフランス王家の紋章ともなりました。

こんなニンニクの花と間違えてしまうような貧弱な花に、百合などという名前を付けてしまうの?... と思ってしまったのですが、よく見ると、なかなか清楚で美しいのでした。
アルプスには「聖ブリュノーの百合」という花があるそうです。形状はほとんど同じ。ただし花弁がもう少しふっくらしていて、いかにも貴重な高山植物という感じになっています。私はブルゴーニュで見つけたこちらの百合の花で満足しようと思います。



Phalangère à fleurs de lys
ところで、花弁が6枚の白い花で良く似ていた野生のニンニクは、ラムソンと呼ばれる植物でした。

葉を見ると、ラムソンとは全く違うのが分かります。野原の白ユリの方は右の写真のように草のような細い葉なのですが、ラムソンの方はスズランに似ていています。


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ラムソン
スズラン
作成:2004年6月 更新:2011年4月
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