フランスに派遣されたゾロの話
Diego, le chat masqué

   前のページで、デルフィーがスペインに旅立ったことをお話しました。

 そしてデルフィーがいなくなった翌年の春、子ネコがやってきました。

 家族のみんなは、デルフィーがスペインから派遣したネコだと、すぐに分かりました。

 子ネコは、すぐにディエゴと名づけられました。
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 「仮面を脱ぎなよ。正体が分かっているのだから!

 お腹をいっぱいにしたディエゴがサロンのソファに落ち着くと、みんなが彼にそう言いました。

 右の写真を見たり触ったりしてみてください。
 
 みなさんにも、ディエゴが誰だか分かるでしょうか? そう、まぎれもなく、黒覆面をした怪傑ゾロだったのです!

 ゾロのお話をご存知ない方のために書きます。ゾロのテレビ・ドラマのストーリーは、主人公ドン・ディエゴが祖国スペインで学問を修めてカリフォルニアに戻ったところから始まります。

 ドン・ディエゴは由緒あるスペインの貴族で、音楽や文学に親しむ青年。しかし黒覆面に黒装束のゾロに変装して、黒い馬にまたがって、正義を守るために活躍しました。

 デルフィーはスペインに行ったのですから、ゾロを送ってきたことも納得できます。

 正義の味方だったデルフィーは、彼のテリトリーだった地域の治安が乱れていることに気遣ってディエゴを派遣したのだ!・・・・・と、いうことになりました。

 テレビ・ドラマではゾロの正体は誰にも分からないのですが(最後の頃にはお父さんだけには分かりました)、ネコのディエゴはすぐにばれてしまったのです。そうですよね。目を隠しただけでは、誰だか分かる方が当然です。



星の王子様になったディエゴ

 ディエゴは甘えん坊で、みんなに好かれました。

 でも彼は何となく変でした。スペインを懐かしがっているみたいに、物思いにふけったりすることがあったのです。

 夏が過ぎたころからでした。なぜかディエゴは、家の前の道路に出て、道の真ん中でうずくまることが多くなりました。交通量の少ない田舎の道ですが、それでも車は時々通ります。どうせ人はいないだろうと、かなりのスピードで走り抜ける車もあります。

 家族の人たちも、近所の人たちも、「自殺行為だ!」と何度もディエゴに注意しました。それでもディエゴは、いつの間にか道路に出ていました。

 さすが秋が深まって道路が冷たくなってからは、道の真ん中で寝転がることはなくなったようです。

 それなのにディエゴは、初雪が降った日に、道路脇で死んでいたのが見つかりました・・・。

 まだ子ネコでしたから、家族の人たちは大変悲しがりました。でもディエゴは懐かしかったスペインに帰ったのだろう・・・という安らかな気持ちもしたそうです。星の王子さまのように自分から進んで星に戻って行ったような感じがしてならなかったからです。


毛を黒く染めてやって来たボク


 冬が去って、また春が来ました。

 そして、ある晴れた日、ボクが、ディエゴと全く同じようにしてやって来ました。つまり、隣の空き家の庭で泣いていたところを、紐でつるしたカゴで釣り上げられたのです。

 ここまで読んでくださったら、どうしてボクがトルナドという名前なのか、分かってくださったと思います。そう、ディエゴことゾロが故郷に早々と戻ってしまったので、代わりに彼の愛馬トルナドがスペインから派遣されたのです。

 ボクも、トルナドだと、すぐに分かってもらいました。ディエゴがスペインに戻ったころ生まれたような年齢だ、というのも証拠になりました。

 それでも家族の人たちは、近所にボクの飼い主がいないかと聞いて回りました。でも誰も知っている人がいませんでしたし、兄弟らしいネコも見つかりませんでした。

 でも皆さんだけに教えますが、ボクは本当のトルナドではないのです。
 ゾロの愛馬は黒く光る馬です。ボクの体も真っ黒ですが、毛先だけ黒く染めてあるのです。

 背中などをちょっと逆なですると、真っ白なのが分かってしまいます。最悪なのは、雨にぬれて毛が寄ってしまったときです。

雨にぬれて帰ったときの姿・・・

 体をなぜられるのは好きですが、白いのが見えて、ボクの仮装がばれるのではないかと、始めはビクビクしました。でも幸いなことに、今にいたるまで、「トルナドではないじゃないか!」と言われたことはありません。テレビの連続ドラマだって、ゾロは黒い馬が使えないときに白馬で間に合わせたことがあるのです。


ボクの自己紹介はここで終わりますが、続きがあります 



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