ヤドリギ  gui

広葉樹が多い地方に住んでいるので、冬になると、落葉した木々を色どるヤドリギが目につきます。
ケルト人たちにとって神聖なものだった

ヤドリギ(gui)は、生き生きとした緑色をしています。まるでクス球のよう。大きなものは直径60センチくらいになります。

枯れ木に付いている緑のクス球は、神秘的な感じもします。白い真珠のような実を冬に付けるので、飾りのようできれいになります。

なるほどケルト人たちは、樫の木につくヤドリギを神聖なものとしていたそうです。樫の木にヤドリギが育つのはとても珍しいのだそうです。
ヤドリギの下でキス

ケルト人たちの風習は、今のフランスにも残っています。

クリスマスが近づく頃、ヤドリギを玄関のドアの上などに飾ります。新年を迎えたときに、そのヤドリギの下に立ってキスをすると、その一年が幸せになのだとか。

そのときに Au gui, l'an neuf ! と言うのが、「新年おめでとう!」の挨拶になります。

万葉集でも歌われていたヤドリギ

枯れ木ばかりの景色の中でヤドリギを見ると、何か特別な力が宿っていると感じるのは自然だとも思えます。

生命の力をみせる鮮やかな緑色の植物を玄関先に飾るところ、なんとなく門松を思い起こさせます。

実は、日本でもヤドリギ(古名「ホヨ、ホヤ」)を特別なものとして扱っていた形跡があります。
万葉集 大伴家持の歌 (巻18-4136)
あしひきの
山の木末(こぬれ)の寄生(ほよ)取りて
挿頭(かざ)しつらくは
千歳寿(ほ)ぐとぞ

毎年ヤドリギをとりたいと思うのだけれど・・・

久しくヤドリギを飾っていません。

大きく育っているものは容易には切り落とせないし、木の下の方にある取りやすいヤドリギはなくなっている場合が多いのです。

朝市や花屋さんなのでは小さなものを買えるのですが、どうせなら巨大なヤドリギが欲しいと思ってしまうのです。

左の写真は、朝市で売られていたヤドリギ(赤矢印)。

クリスマスが近づいた頃から、朝市などでヤドリギが売られます。

プロヴァンス地方を旅行したときに朝市で売られていたヤドリギは、まるでスズランの花束を売るように小さなものでした。

南フランスは乾燥しているので、ヤドリギは貴重なのでしょう。

こちらでは野生のものなど見られないミモザが南フランスにはあるのと対照的です。
色を失うと汚いだけ・・・

実は、民家のドアにヤドリギがあるのは余り見かけることはないのですが、たまに商店やレストランなどに飾られていることがあります。

ブティックの入り口に飾られていたヤドリギ

上の写真を撮影したのは1月中旬。緑が鮮やかです!


左は、教会の天井に吊るされていたヤドリギ。

高い天井ですから、かなり大きなものです。

撮影したのは4月下旬。早く取り外した方が良いと思うくらい枯れていました。
冬だけ姿を現すのではない

冬にならないとヤドリギは目立たないのですが、まだ葉が茂っていないと、よく見えます。

なかなか美しいと思います。

違いは白い真珠のような実がなっていないこと。
でも、この実はベタベタして、ほとんど始末に終えないくらいなのです。

右の写真は、ブルゴーニュ地方で見た5月初旬のヤドリギです。

コローの絵のような色彩だと思われませんか?

ブルゴーニュを故郷とする父親を持っていたコローは、こんな風景もたくさん描いていたのです。
コローを思い出してしまったのも無理ないかも知れません。
彼の有名な一枚には、こどもたちがヤドリギを取っている絵がありました。

モルトフォンテーヌの想い出 (1857年)
Souvenir of Mortefontaine, Musée du Louvre, Paris
作成: 2003年12月  更新: 2006年1月
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