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「パックスしたら?」と冷やかされたこともあります...

Fraternité...

 Avec mon bien cher frère Pommard...
一番初めに「ネコのおしゃべり」のページを書いたポマールの弟のロマネです。覚えていらっしゃいますか? ブルゴーニュのワインの銘柄を名前につけてもらった兄弟です。

ボクたちが生まれた家のこと

ボクたちは、ちょっと変わった家庭で生まれました。小さな村にある何百年もたっている古い家というのは珍しくないことなのですが、人間も、犬も、ネコも数えきれないくらいいる家だったのです。 

人間が多いのは、今ではなくなってしまった親子3世代家庭だから。犬が多いのは、血統書付きの犬を育てて売るのが仕事だったからです。なぜネコもたくさんいたのかは分かりません。

これだけネコがいると、次々と赤ん坊が生まれます。若旦那さんは、赤ちゃんネコの数がある程度まとまると新聞広告を出していました。無料で配布される、広告だけでなりたっている小さな新聞です。

「可愛がってくださることと引き換えに差し上げます」という、ありきたりの文章の小さな広告ですが、いつももらい手は見つかっていたそうです。

ある日の午後、新聞広告を見た人がやって来ました。午後3時過ぎでしたが、お爺さんとお婆さんはまだダイニングキッチンで昼食を続けていました。

ダイニングキッチンに案内されたお客さんは、家の中が雑然としていて、今ではめったに見られない昔の農村を思わせる貧さがある家庭なのでびっくりしました。でも、とても愛情にあふれた家庭だと感じたそうです。それで、ボクたちの性格が良いのも、そんな家庭で幼少期を過ごしたからだろうと言っています。

ネコをもらいに来るのが遅かったので、残っていたのは兄のポマールとボクだけでした。ダンボール箱にはぎっしり赤ん坊がつまっていたのですがが、まだ小さすぎるので渡すわけにはいかなかったのです。


ボクたちは一緒に養子になりました

幼いボクたちは、じっと抱き合っていました。兄弟たちが次々と去っていったので、ボクたちもいよいよ離れ離れになるのかとビクビクしていたのです。

お客さんは「お腹の白い猫が欲しかったのだ」と言って、嬉しそうにポマールを撫ぜました。

家のご若旦那さんは、ポマールは母親を早くからなくした捨て子だったので、ボクのママに育てられたのだ、と話しました。「この子たちは、とっても仲が良いのだ」とも付け加えました。それから、ポマールは男の子で、ボクは女の子だと思うとも付け足しました。

そんなポマールとボクを別れさせるのは可愛そうだと思ったのか、ボクたちは一緒に引き取られることになりました。

ポマールも紹介したように、ボクはチビちゃんの意味がある「ティティ」という愛称で呼ばれています。ポマールとボクは1カ月も生まれた時期は違わないのですが、ポマールの方がずっと大きかったのです。

でも今ではボクの方が大きいかも知れません。ボクの体重は7キロくらいあるのです。でも筋肉質なので、太っているとは言われません。ポマールの方はフワフワなので、見た目より体重は少ないようです。
余りにも仲が良いので、「パックスしたら?」なんて冷やかされてしまいました

最近でこそ、よほど寒いときでないと抱き合って寝たりしませんが、幼いころのボクたちは一身胴体でした。


ところでボクたちが生まれた翌年の1999年のフランスでは、パックス(PACS)という新しい婚姻関係が法律で認められました。

近親間を除けば、同性でも夫婦のような関係を持てる連帯市民協約です。同性愛を認めることになる! と大変な反対があったのですが、ついに法律は成立しました。法律ができてからの3年の間に、パックス・カップルは7万組もできたのだそうです。

そんなわけで、血がつながっていないボクたち兄弟はパックス関係になれる、なんて言われてしまいました。でもボクたちは遺産相続するようなものもないので、パックスなんかする必要はありません。パックスしたら?なんていうのは、冷やかしだと思っています。
次は、冒険の話しです



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