ブルゴーニュ・ワインの名をつけられた.
ポマールとロマネ兄弟

記事:
ポマール
ロマネ


生魚を人間が食べる!
最近のフランスは日本食ブーム。それで、ポマール兄弟の家でもお刺身とか言うものを食べるようになりました。
家の人が見よう見まねでやってみたら、難しい料理ではなかったのだそうです。煮たり焼いたりはしないで、適当に切ったものをお皿に並べれば良いだけなのだそうですから!

珍しい料理なので、家に人を呼ぶと、いつもそれを食べさせて、「おいしいだろう、おいしいだろう」とやって喜んでいます。お刺身なんかは食べたことがないので、おっかなびっくりで手を出した人も、みんな「おいしい!」と感激します。

ただし、海に遠いブルゴーニュでは魚はあまり食べませんから、魚介類は嫌いという人たちがたくさんいます。小さいときに腐ったものを食べさせられた、という苦い経験があるのでしょうか?・・・ そういう初めから「魚介類は食べない!」と決める人たちは、お刺身にはもちろん手を出さないそうです。


マグロに狂ったポマール
ある日、 ポマール兄弟もお刺身を食べてみないか、と言われました。彼らもブルゴーニュのネコらしくは肉食でしたが、「魚は調理したものより生の方がおいしいから」と言われたので、おそるおそる鼻で匂いを嗅ぎました。

すると、どうでしょう! ポマールは「マグロのステーキ」と言って売られている赤い魚の肉に惚れこんでしまったのです。これは、日本語では「赤味」と呼ばれている部分だそうです。トロとかいう変な名前のも部分もあるそうです。フランスでは、マグロはマグロ、ネコはネコですが。

ところでポマール君はおっとりとしていて、感情も余り外には出さない性格をしています。ところがマグロを食べてみたポマールは、気が狂ったように喜んだのです。

ムシャムシャと、普通ではありえないような食べ方をして、「もっと欲しい」とお行儀悪く手を出します。6人分くらい買ってきたトロなんか、ひとりで全部食べてしまいそうな勢い。

それ以来、台所でトロを切っていると、調理台に上ってくる。食卓で食べていると、手を伸ばして取ろうとする。本来のポマール君の姿ではないのです。そんなお行儀が悪いことはしたことがないので、家の人たちはびっくりしています。

マグロが出た食事のときは、食事の後片付けが済んでも、ポマールはその辺にウロウロして待っています。「もう、ないの?」という顔で見上げるので、哀れで気の毒になってしまうほどだそうです。それでマグロを買うときは、ポマールの分も余分に買うようになりました。

それでも、お腹いっぱいになるほどは食べさせてもらっていないようなんです。ブルゴーニュでは魚介類はとても高いからだろうと思います。お医者さんたちも、「肉より魚の方が健康に良い」と言っているのですから、もっとポマールに食べさせてあげたって良いのに、そうしないのですから...。


どんどん太ってきたロマネ、スマートになったポマール
ロマネの方は、マグロには興味を示さないそうです。いちおうは食べるらしいのですが、「どうということはない」という顔をしています。

彼が好きなのは、相変わらずクリーミーなチーズとバター。そのせいか、毛並みは猫一倍ツヤツヤしています。

兄弟が小さかったときは、ポマールがデブで、ロマネはチビ、ということになっていたのですが、最近では明らかにロマネの方がデブちゃんになりました。

階段を下りてくるときなんかは、人間がドタドタ降りて来たのかと思うくらいの音がします。それでも顔は小さいし、色は黒っぽいので、ちょっと目には太って見えないようです。

ポマール君の方は、「スマートで、美しい青年になった」と家族は惚れ惚れとして言っています。でも、相変わらず、やってくるお客さんたちはロマネの方ばかりを褒めるのだそうです。



なおロマネ君は、兄のポマールをいじめた野良猫と戦った冒険談を語っていましたが、その後、いじめは全くなくなったそうです。よかった...。

* 初めは、ポマールは「トロ」に狂ったと書いたのですが、「刺身に詳しい」と自称する人が彼らの家に来たときに、これは「トロ」ではなく「赤味」だと言ったそうです。どうでも良いことだと、ボクは思うのですが、読者にクレームをつけられるのも嫌なので訂正しました!

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