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フランスのクリスマス |
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クレッシュ (crèche)

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フランスのクリスマスの飾りつけに欠かせないものに「クレッシュ」があります。イエス・キリストが誕生した場面を再現したものです。「キリスト生誕群像」という和訳を見たことがあります。
クリスマスの時期のフランスでは、教会の中や、街角に設置しされたクレッシュを目にしますが、自宅で飾るためのセットも売られています。
日本のクリスマスはジングルベルとクリスマス・ケーキに代表されているように感じますが、クレッシュを見ると、クリスマスはやはりキリスト教のお祭りなのだと感じます。もっとも、クレッシュを飾るのはカトリック特有のもので、イギリスやプロテスタントの国では余り行われないのだそうですが。
「クレッシュ(crèche)」という言葉は、ラテン語のcripiaに語源があり、動物が餌を食べる場所を意味します。それを広げて家畜小屋の意味に受け取られています。さらに意味が広がって、働く親を持つ幼児を預かる保育所も、フランス語では「クレッシュ」と呼ばれていますが、これは余談! |
クレッシュの歴史
キリストはどんなところで産声をあげたのか? 初めは、家畜小屋になっていた洞窟の中と思われていたのが、3世紀頃になると本当はベツレヘムの家畜小屋で生まれたということになったのだそうです。
そのような姿は『ルカによる福音書』に語られていて、マリア様はキリストを飼葉桶に置いたと記載されているのだそうです。
キリスト誕生の様子を再現するというクレッシュ。それを初めにしたのはアッシジの聖フランチェスコで(1223年)、クリスマスのミサを行うとき、人間を登場人物としてキリスト誕生の光景を作ったそうです。「生きたシーン(scène
vivante)」と呼ばれるクレッシュを、ヨーロッパを旅行していたときに何回か見たことがありました。
聖フランチェスコの話が本当であるかどうかは別として、クレッシュはイタリアで発展したようです。ただし、今日の飾りのようなクレッシュが登場したのは16世紀。
初めのうちは教会がクレッシュをつくるというものだったのが、17世紀になると家庭でも行われるようになり、18世紀に大きく発展したそうです。特にナポリの職人が作るクレッシュは素晴らしいものでした。
貴族と教会の勢力を排除しようとしたフランス革命期には、クリスマスのミサや、宗教的なシーンを公の場で見せることが禁止されたために、家庭でクレッシュを飾ることが盛んになります。
プロヴァンスのサントンでつくられたクレッシュ
19世紀になると、プロヴァンスのサントンという人形で作ったクレッシュが普及します。
粘土を焼いてつくる人形サントンは、プロヴァンス地方を旅行するとあちこちで見かけます。多くは18世紀のこの地方の服装をした人形たち。クレッシュに使える登場人物も数多くあります。
キリストが生まれたのは馬小屋だったのか?
フランス各地でクリスマスの時期に飾られるクレッシュを見て、気になってしまったことがあります。
日本では、キリストは馬小屋で生まれたと聞いていたように思います。 ところが、フランスで見かけるクレッシュには、馬よりはむしろ他の家畜の姿が目につくのです。 |
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フランスでは、キリストは「ベツレヘムの家畜小屋(étable de Bethléem)」で生まれたと表現されています。「étable」というのは家畜小屋。もし馬小屋なら「écurie」という単語を使うはずです...。
調べてみると、フランスのクレッシュに欠かせない動物はロバと牛、それから羊飼いだ、という記述もありました。少なくともフランスでは、キリストは馬小屋で生まれたとは限定していないことは確かなようです。 |
キリストが生まれたのは馬小屋なのか、普通の家畜小屋なのか?...
それを気にするのは私だけではないらしく、次のようなページを見つけました。
イエスは馬小屋で生まれたか? (平塚 徹先生 /京都産業大学)
とても興味深いご指摘です。「étable(家畜小屋)」に対応する英語は「stable」なのですが、stableは馬小屋の意味で使われるようになっているのだそうです。確かに、Google英語版で画像をサーチしてみたら、馬小屋の写真ばかりがヒットしてきました。
そこで疑問がおこりました。聖書はいつ、何語版から日本語に訳されたのか?
聖書翻訳の歴史 和訳史5 日本で最初に出版された聖書 版木が語るロマン...
日本で初めての聖書が出版されたのは明治始め、そして出版に尽力したのは全てアメリカ人だったのですね。
この手の疑問を私はもう一つ持っています。
リンゴを食べてしまったアダムとイブのお話しで、アダムが体を隠すのはイチジクの葉ですよね? フランス人はブドウの葉だと言うのです...。これはイチジクが正しいのに、フランスではブドウの葉ということになっているようです。 |
いつクレッシュを飾るのか?
クレッシュを飾るのは、キリストの降誕を待ち望む期間「待降節(たいこうせつ)」の第一日曜日、あるいはニコラス聖人の日(12月6日)。そして、キリストが神殿に行った聖燭祭(2月2日)まで飾っておくものなのだそうです。
その間に、1月6日にエピファニーがあって、この日に3聖人がやって来るという筋書きです。
待降節(アドベント、降臨節とも言う)とは、11月30日に最も近い日曜日(11月27日 - 12月3日の間の日曜日)からクリスマスイブまでの約4週間。
聖燭祭(2月2日)の方は、イエス・キリスト降誕後40日目にあたり、聖母マリアが神殿で清めの式を受けた日。 |
ところで、考えてみれば当然なのでありますが、左のようなクレッシュを始めて見たときには少なからず奇妙に思いました。
みなさんが神妙な面持ちで藁の上を見つめて祈りを捧げていらっしゃる・・・。
クリスマスになったら赤ちゃんのキリストの人形を置くらしいのです! ちなみに、この写真を撮っていたのは12月24日でした。 |
南フランス、マルセイユに近い港で出会った一風変わったクレッシュ

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