どのくらい働いているのか

労働時間の短縮の歴史

 戦後のフランスは、有給休暇が増えていきました。現在では、最低でも年に5週間は休暇を与えることが義務づけられています。日本と違って、たいていの人は年休を消化します。

 週35時間労働(RTT: Réduction du temps de travail)という法律がつくられてから何年もたちましたが、まだまだ議論は続いています。これは良いのか、悪いのか?・・・

 法律ができるという時期には、週35時間も働かなくても良い職業もあったことが明るみに出て(親方三色旗をかかげる国鉄の運転手の中には信じられないくらい働かなくて良い人もいた)、そんな人たちは強制的に週35時間働かせるべきだ、などという冗談交じりのニュースもありました。

 労働時間を減らすのは、新しい雇用を増やして失業率を下げることだと言われたのですが、代わりに雇用が増えたという感じもない。企業側にとっては、もしろん痛手の法律。小さな企業では、そんなことはできないので、職場によって格差も出た。

 友人関係を見ていて気づくのは、管理者の人たちの労働時間がずいぶん減ったらしいこと。時間外労働を休暇に振り替えている友人たちは、年に8週間くらいの年休をとっていると言います。


就業人口の低下

 働いているフランス人の割合は4割。6割は無職です。フランスの失業率は9.4%(2004年)。

 ここ10年くらいをみても、労働人口はずいぶん減ってきました。高学歴化によって、働きだす年齢が高くなったこと。それから、年金生活に入る年齢が若くなったこと。社会保障制度では、だいたいにおいて60歳から年金がもらえることになっているのですが、早くから年金をもらい始めることができる人もあります。それで隠退の平均年齢は58歳。もちろんフランスでも高齢人口の率は増加しています。
288
男女別就業率 (2003年)
年齢 男性 (%) 女性 (%)
 15〜29歳 51.1 43.0
 30〜49歳 95.4 81.9
 50歳以上 38.1 26.4
 15歳以上 62.3 48.9
288

労働時間

 フランス人の労働時間平均は、年間1,561時間(2003年)。ヨーロッパ連合15カ国のうちで最低になっています。

 ちなみに、日本は1,864時間。年に300時間違うわけですが、もっと差は大きいと思っていました。フランスでも商店の自営者などは労働時間が長いからのようです。

 フランス人は職業生活と私生活を両立させることを理想としています。職業生活が私生活を邪魔しているかというアンケートの質問には、「全くない」と答えた人が57%もいます。幸せ! 「たまには」は28%、「頻繁に」は10%、「かなり頻繁に」は5%。日本は逆になるのではないでしょうか?

319
仕事のストレス

 それでも、フランス人のストレスは大きくなっているのだそうです。サラリーマンの3人に1人にはストレスがあると見られています。医者にかかる場合にストレスが原因になっているものは、3分の2にもなています。

 特にストレスが多いのは管理者たち。仕事が重過ぎると思う管理者は65%(1992年には43%だった)。5人に1人は強壮剤や睡眠薬を着用していると見られています。

 確かに、これは友人たちを見ていても感じます。フランスの会社ではトップダウンなので、トップの責任は重い。平社員は気楽に仕事を放り投げて帰宅できるのですが、残った仕事をしょわなければならないのは管理職の人たちなのですから。給料の差があるのだから、フランスの方が自然と思ってしまいますが。

 工員をしている人たちのストレスもたまってきたようです。週35時間労働になってからは、同じ時間で以前の仕事をするように強要される。日本で生まれたトヨタ方式(ジャスト・イン・タイム)も、フランスの工場に浸透してきた。首切りの心配もある。

 サラリーマンの10人に1人は、仕事のストレスによってドクター・ストップをかけられた経験が少なくとも1回はあるそうです。でも、これはフランスのドクター・ストップが日本とは違うことを加味しなければなりません。ちょっと意気消沈したくらいで、2週間も休みをもらった友達もいますから。

 医者が「少し休みなさい」と言えば、企業側は「働け」とは言えないのです。給料を差し引けるので、企業側には大きなマイナスにもならない。病欠した人は、給料を健康保険から補填してもらいます。 
316

作成: 2005/02  更新: 2008/01
数字で見るフランス人 目次
Home
Copyright © Bourgognissimo. All Rights Reserved.