レシピ  【 デザート】
フランス王家の紋章の形に焼いた

むかし風マドレーヌ

Madeleines à l'ancienne


よく知られた洋菓子マドレーヌ。

中に何か入っているわけでもないのも味気ないので、わざわざ買うほどのケーキではないと思っていました。

ところが、あるとき、そのマドレーヌを焼いてみようと思ったのです。
フランスの友人と話していたとき、プルーストの小説『失われた時を求めて』のことが話題になったのが発端でした。

この難解な小説を読み切った人は少ないと思いますが、フランスでも日本でもよく知られているエピソードがあります。紅茶にマドレーヌを浸して食べたら昔を思い出した、というもの。

でも、実際の小説では、マドレーヌを浸したのは紅茶ではなく、乾燥した菩提樹の花から作ったハーブティー(リンデン)だったのだそうです。フランスでは「ティヨル(tilleul)」と呼ばれるお茶です。

Et dès que j’eus reconnu le goût du morceau de madeleine trempé dans le tilleul que me donnait ma tante (...), aussitôt la vieille maison grise sur la rue, où était sa chambre, (...) toutes les fleurs de notre jardin et celles du parc de M. Swann, et les nympheas de la Vivonne, et les bonnes gens du village et leurs petits logis et l'église et tout Combray et ses environs, tout cela qui prend forme et solidité, est sorti, ville et jardins, de ma tasse de thé.
Marcel Proust, Du côté de chez Swann


そんな話しをしていたら、マドレーヌを作りたくなりました。

少し前に買ったフランス王家の紋章の形をしたシリコンケーキ型を使おうと思いついたのです。

マドレーヌといえば貝殻の形をしていて平べったいと決まっているのですが、ちょっと変わったものもおもしろいかも知れない。

この形は「Fleur de lys(百合の花)」と呼ばれる模様で、ブルボン家の紋章。ところがフランスでもこの形に焼けるケーキ型を売っているのを見かけたことはなかったので、日本で買って持ってきたところだったのです。


紋章のついた衣装を着たルイ14世
レシピを探してみると、大きくわけて2通りありました。ミルクが入るものと、入らないもの。「むかし風」とついているのが気に入って作ったのですが、ミルクが入らないレシピでした。

それでは少し柔らかさにかけてしまうのではないかと少し心配でした。

でも、きれいに膨らんで、こんなに美味しいマドレーヌは食べたことがないと思えるようなのができあがりました♪

王家の紋章は金色をしているのですが、マドレーヌはこんがりキツネ色に仕上がるので、まさにFleur de lysに見えるのも気に入りました。

材料 (普通のマドレーヌ型で焼いて30個分):


小袋に入った
フランスのベーキングパウダー
小麦粉 225グラム
砂糖 175グラム
バター 100グラム
ベーキングパウダー 小袋1包(11グラム)
4個
レモン 1個(皮のみ使う)
1つまみ

必要な道具:
・マドレーヌを焼く型
・オーブン


作り方:
レモンの皮をみじん切りにし、バターは湯銭で溶かしておく。

ボールに卵と砂糖を入れ、完全に混ざるまで強くかき混ぜる。

ふるいにかけた小麦粉とベーキングパウダーを加え、さらにレモンの皮のみじん切り、溶かしたバターを加えてかき混ぜる。
シリコン型にスプーンなどを使って(1)を4分の3程度の高さまで入れる。

*シリコン型はそのままで良いのだが、金物のマドレーヌ型を使う場合にはバターを薄く塗り、小麦粉をふりかけ、余分な小麦粉を払い落してから入れる。
(3)を20分ほど寝かせ、その間にオーブンを220度に熱する。

オープンで8分程度焼く。


Memo :
  • マドレーヌは2時間くらいで冷めるので、ブリキ缶などに入れて保存できます。だんだん固くなりますが、1週間くらいは大丈夫。ただし、焼きたて、まだ少し暖かいうちに食べるのが最高だとは思います。
  • 翌日以降に食べるときは、オーブンで軽く温めると皮がパリっとしておいしくなります。そのために、食べ残す分は少し焼き足りないくらいにしておくと丁度良いようです。
  • 金物のマドレーヌ型を使う場合には、熱がすぐに伝わる鉄製の方が柔らかいマドレーヌができるとのこと。普通のマドレーヌ型で何回にも分けて焼く場合には、そのたびに型を冷やしてから焼くそうです。
  • シェフのアドバイスによれば、生地を2時間くらいは寝かせておいてから焼いた方が良いとのこと。
  • レシピでは生地は型の4分の3まで入れるとありましたが、ぎりぎりまで入れてしまって身のあついものを作った方が柔らかくておいしいと思いました。


マドレーヌの歴史

マドレーヌ(Madeleine)は女性のファーストネームです。お菓子のマドレーヌは、これを作った女性の名前だったと言われています。

誰がこのお菓子を作ったかは定かではありません。最もよく言われるのは、18世紀半ばにロレーヌ公スタニスラスがコメルシー城で開いた晩さん会のためにマドレーヌ・ポルミエという名の女性が作ったという説。

ロレーヌ公スタニスラスはポーランド国王だった人で、美食家として知られています。

ロレーヌ地方ナンシー市のスタニスラス広場。左の写真で右にあるのがスタニスラスの銅像。
最近は修復も済んだので、フランスで最も美しい広場と言っても過言ではないでしょう。世界遺産にも登録されています。


王様のマドレーヌ(ばら売り)

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それより以前、サンティアゴ・デ・コンポステーラに巡礼する人たちにマドレーヌという女性が振舞ったお菓子だとする説もあります。

スペインの北西にあるサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼のシンボルは帆立貝で、このマドレーヌというお菓子は帆立貝の中央を切り出したような形をしています。


いずれにしても、マドレーヌが広まったのはコメルシーの町からだったようです。

スタニスラスの死後(1766年)、コメルシー町でマドレーヌをスペシャリティーとするケーキ屋が登場します。その後、コメルシーの町ではマドレーヌがたくさん作られるようになります。

コメルシー町とマドレーヌが決定的に結びついたのは、パリとストラスブールを結ぶ鉄道ができたときでした(1852年)。コメルシー駅ではホームでマドレーヌを売ることが許可され、乗客たちは数分の停車時間にマドレーヌを競って買ったそうです。

駅弁ならぬ、お菓子のマドレーヌをコメルシー駅で買うブーム。これは20世紀半ばまで続いたそうです。





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