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エポワスはウオッシュタイプのチーズ。AOC(原産地呼称統制)の品質保証付きです。
牛のミルクから作ったチーズの表面を、ワインをつくったときに残るブドウの絞りカスからつくる「マール」と呼ばれるブランデーで洗いながら熟成して商品となります。まさに上質ワインの産地ブルゴーニュならではのチーズで、とっておきのブルゴーニュワインを出すときには、チーズの盛り合わせの中には必ず入れたい逸品です。
買ってから余り長くおいておくと、黄色いクリームのようにとろけ、匂いがとても強くなります。そんなチーズがお好きだったら、本当のチーズファン! でも、こんなに個性的なチーズはお嫌いでも、気になさらないでください。チーズが好きなフランス人でもエポワスを食べられない人がいますから♪
ただし、匂いはきついのですが、味はまろやか。好きになるとヤミツキになるチーズです。
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大きなエポワスをレストランで切って取り分けてもらっているところ
エポワスには2つのサイズがあります。
小さな方は直径9.5~11.5 cm(250~300グラム)。大きな方は、直径16.5~19 cm(700グラム~1キロ)。
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エポワスの歴史
エポワス(Epoisses)は、ブルゴーニュ地方コート・ドール県にある村の名前です。
16世紀初頭にエポワス村にあった修道会が、現在のチーズエポワス、すなわち牛乳で作ったチーズをマールで熟成させるというチーズを作り始めました。それから200年後、彼らはエポワス村を去るにあたって、地元の農家の女性たちにエポワスの作り方を伝授しました。女性たちが秘伝をさらに発展させ、次第に外からも評価され始めます。
1815年のウィーン会議の際にはチーズコンクールも開催されたのですが、欧州で生産されている49種類のチーズの中で、エポアスは第2位の座を獲得しています(1位はフランスのブリー )。
『美味礼讃 』を書いたことでも知られる美食家ブリア=サヴァランも、「チーズの王様」と絶賛し(1820年)、エポワスの知名度は高まります。
エポワスの生産は盛んになり、20世紀初頭には300の農家がエポワスを作っていたとの記録があります。
ところが第一次世界大戦が勃発。この戦争はフランスで多くの若者を失わせたのです。エポワス村の農家も打撃を受けました。女性たちが畑仕事の他にチーズづくりまでもすることは無理なため、エポワスをつくることを諦める農家が続出します。第二次世界大戦中には、エポワス・チーズはすっかり姿を消してしまいました。
エポワス村の農家ベルトー夫妻が立ち上がり、製造法を知っている人々から情報を集め、昔の製法でエポワスを蘇らせます。これが今日、「エポワスといえばベルトー」というくらい有名になった会社の創設者でした。
ベルトー社(Berthaut)トレードマークは、エポワス村にある城の望楼をデザインしています。
* 実物と比較される方はこちらの写真をご覧ください。 |
エポワス
ベルトー社 |
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AOCチーズとなったエポワス
1991年には、最高級の農産物であることを保障するAOC(Appellation d'origine contrôlée: 原産地呼称統制)も獲得します。
エポワスをつくるために使用される牛乳は、放牧されている牛から搾乳されますが、牛の品種としてはMontbéliarde、 Brune、 Simmentalのいづれかに限定されています。原則として、低温殺菌ないし殺菌された牛乳が使われています。チーズの熟成期間は最低4週間。
製造は高度なテクニックが必要とされるのだそうです。エポワスの生産者は、工場が3つと、農家が1つしかありません。ミルクを提供している農場は56軒。それでも、年間935トンが生産され、生産量は増加傾向にあります(2005年データ)。 |
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レストランで選んだチーズ |
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エポワスをおいしく賞味するには?
エポワスはとろけてくるチーズですので、買ったときに入っている木箱の中に入れたままで保管しましょう。
カマンベールのように箱から取り出して皿にのせ、食べ残しをそのままにしておくと、エポワスは皿の上でペチャンコになってきてしまうのです。
買ったままの箱をテーブルに乗せるのは味気ないので、私は右のような器を使っています。とろけてきたエポワスはすくうようにして食べますので、しっかりした陶器に入れておいた方が食べやすいのです。
エポワスが最もおいしい時期は年に2度あります。1つは春の始め。牛たちは新芽のはふく草を食べるからです。2つ目冬になる前。この時期にはチーズの香りが一段とたかまります。
冷蔵庫に入れて保管しているエポワスは、食べる30分前には出しましょう。クリ―ミーなのが嬉しいチーズなので、冷たいとおいしさが劣ってしまうからです。
ところで、エポワスはチーズとして食事の最後に食べるだけではなく、料理に使うこともできます。
ちなみに私は、フランスパンを薄く切ったものに少しエポワスを塗って、オーブントースターで焼いて食前酒のおつまみにすることがあります。
特に、エポワスが器の底にへばりついているだけの状態になってしまったものは食卓に出すと美しくありませんので、この使い方をしています。
余りにも古くなったエポワスは匂いも味もがきつなり、固くなってもいるので、もう賞味期限をすぎたかと思っても、焼いてしまうと非常においしくなります。もしかしたら、エポワスは食べられないという方でも、こうするとスナックのように食べられるかもしれません。
エポワスを加熱するのは邪道かもしれないのですが、レストランでもエポワスで創作料理を作っています。
Croustillant d'époisses chaud, salade à l’huile de noix
(ブルゴーニュ地方のレストラン)
エポワスをシュウマイの皮で包んで揚げたら、こんな感じにできるのではないかと思いました。 |
エポワスの生産者たちもインターネットで色々なレシピを紹介しています。
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エポワスのバリエーション: アフィデリス (Affidélice)
ワインの産地ブルゴーニュらしく、ワインで洗って熟成されせたチーズは他にもあります。
エポワスは「マール」とブランデーを使っているので、少し匂いがきつすぎると思われる方は、まずはこちらでお試しになるのも良いかもしれません。
アフィデリスは、エポワスのベルトー社の商品で、「マール」の代わりに、ブルゴーニュの白ワインであるシャブリを使って熟成させたチーズです。
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* 他のブルゴーニュのチーズもご紹介する予定です。
サイト内の「ネコのおしゃべり」にもエポワスに関するページがあります:
ロマネ: 味にうるさいネコなのです
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