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ボクの家は評判のパン屋です

 ボクの家族は、小さな村でパン屋を営んでいます。パンのほかに、ケーキも売っているし、ちょっとしたデリカテッセンもあります。

 上の写真がうちのお店です。自動車が邪魔だったのですが、どいてくれませんでした。1階の右の窓にボクがいるのが見えるでしょうか?

 −よく見えない? それでは、窓をアップした写真を右に入れます。

 窓の上に書いてあるTRAITEURというのは「仕出し屋」という感じの意味です。パイ生地を使ったデリカテッセンを得意としています。

 ボクは製造には携わっていません。ボクの家で働いている人は9人もいるので、ネコの手は必要ないのです。

 でも、いつも窓辺で寝ているだけではありません。

 ボクはマーケッティングを担当しています。ボクが家に迎え入れられたとき、両親はボクが考え出す知恵によってパン屋を繁盛させることを期待していたようです。

 というのも、ボクの名前はギリシャの哲学者と同じソクラテスなのです。フランス語ではソクラット(Socrate)と言います。

ボクのママ

 ボクのママは、ペルシャ猫のヨーロッパ大会で優勝したことがあるという美形だそうです。パパの方は、どうということのない普通の猫だったということです。

 左の写真は、ボクの生みの母ではなくて、養母の方です。

 本当のママの写真を持っていないので代わりに入れてみたのですが、育てのママも美人でしょう?

 とっても愛想が良いので、お客さんにも評判です。

遠くから遥々やってくるお客さん

 フランスでは、最近のパンはおいしくなくなったと言われています。でも数年前に小さな町に開いたボクたちの店のパンは、特別においしいという評判があります。日替わり限定で売るパンもあるし、合計で20種類以上のパンをつくっています。

 車で近所の村々を回ってパンを売っていますが、余り遠くまでは行けません。それで、おいしいパンを食べたいからと遠くから遥々やって人たちもいます。

 いつもパンを30本も買いに来る人がいたので、レストランの人かと思ったら、普通の消費者でした。

 ボクの店まで来るには車で15分はかかるので、毎日来ることは大変。もっと近い所にもパン屋はあるけどおいしくない。それで、まとめてパンを買って冷凍しているのだそうです。冷凍庫から出したパンを数分オーブンで暖めると、焼きたてのようになるのだと言っていました。

 近所でまずいパンを買うよりは遙かにおいしいのだそうで、食事に来る人たちは「冷凍だなんて信じられない!」と言って、カリカリとした歯ごたえを喜んでいるそうです。
 上の写真のパンは、その人が言うところの、冷凍に向いたパンです。普通のバゲットより皮が厚いので、解凍したときに皮が剥がれことがないのだそうです。写真の上のパンは「偉大な世紀(grand siècle)」、下の先端が尖っている方(2つに切ってあります)は「伝統(tradition)」という名前のパンです。

 パンを冷凍するお客さんはトラディションの方を買っています。スペルト小麦(épeautre)を使っていて、独特なおいしさがあるんです。スペルト小麦は昔の品種なのですが、最近ではまた栽培する農家がでてきました。

新製品の開発

 ボクも新製品の開発を考えています。

 大きな町ではホットドッグという商品(左の写真のパン)が売られていると聞いて、興味を持ちました。

 ボクは犬が好きではありませんが、犬好きという人も多いはずです。そこで、食欲をそそるような「温かい犬」というのは人気を集めるのではないかと思いました。このパンを作ろうと経営者会議で提案すると、社長、つまりパパに強く反対されてしまいました…。

 せっかくのボクの提案が拒否されても、異議はとなえませんでした。ボク自身も、このパンは原価がかかり過ぎるのではないかと思っていましたので。

 パパは、伝統的なパンをつくることに情熱を燃やしています。

 近くに残っていた昔ながらのパン焼き小屋を見つけて、そこで昔ながらのパンをつくることを考えています。うちの工場は近代的ですが、やはり木を燃して焼くパンには独特の味があるのだそうです。もう実験もしたので、そのうち店頭に並ぶでしょう。


フランスのパン事情については、
「ブルゴーニュの日々」コーナーにある「おいしいパンを求めて…」のページをご覧ください。


編集部からソクラテス君の近況報告をします。とんでもないことになってしまった!・・・  


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