チーズ騒動
Le fromage qui fâche !

 車椅子のおじさんが失言・・・

 結局、夕食会のために私のマモンが準備したのは、食前酒のシャンパンに合わせるおつまみと、チーズ(何もすることないけれど、どれにするかお店で選んだ)と、フルーツサラダだけでした。

 そんな少ない努力の中にあったチーズですから、マモンはみんなに「チーズはどう?」と聞ました。

 すると車椅子のおじさんが、「一つだけ、おいしくないオランダのチーズがある」と口走ってしまったのです!

 本当は、スペイン国境に近いバスクという地方で作られているチーズなのだそうです。このチーズは、ブルゴーニュでは余り見かけない。それでマモンは、選んだのだと思う。

 みんなにも珍しいチーズだった。でも、おいしくないと困りますよね・・・。

 車椅子のおじさんも知らないチーズだった。だから、おじさんはオランダのチーズだと思った。

 「工場生産のチーズなんだから、おいしくなくて当然だよ」、とご親切に説明している人もいました。


これが問題になったチーズです
2人食べた後がありますね。車椅子のおじさんとマモンだけだったのかな?・・・
 マモンはプンプン!

 誰一人「おいしい」と言わないのだから、マモンのチーズ選びは失敗だったと言えます。

 それでも、文句をつけられたマモンはカンカンになりました!

 「オランダのチーズなんか、親友をもてなすのに出すはずはないじゃないの !!!」

 「だって、味がないから・・・ オランダのチーズだと思った・・・」と、おじさんはタジタジ。

 もう一人のおじさんは、「オランダに出張したとき、結構おいしいチーズを食べたよ」

 助け舟を出したかったのだと思う。

 「本当においしかったんだから」と、このおじさんは繰り返しました。でも、誰も信じない。返事もしない。

 マモンは、かなり長いこと、プンプンを続けました。

 「私たち友達でしょう? なのに、私がオランダのチーズなんかを出すと思うの?! 出すはずないじゃない。なんていうことを言うの! オランダのチーズだなんて!・・・ ひどいわよ・・・」

 そんなのを繰り返しているうちに、こうなりました。

 「20年もあなたとは付き合ってきたけれど、もうこれで、あなたとは絶交よ。20年間も友達だったけど、もう終わりよ! そんな酷いことを考える人とは付き合えない」」

 そのうち、「25年も友達だったけど・・・」になりました。

 みんなは大笑いしていました。マモンに、「やれ、やれ!」という感じ。それを横目に見ながら、マモンはやめませんでした。

 「もう、あなたとは絶交よ。会社で会っても握手もしてあげないから! 絶対にしないから!」

 どのくらい本気でマモンが怒っていたのか、私には分かりません。

 でもチーズがでる頃には、みんなワインがかなり回っている。そんなことを言って、みんなで大笑いしたかっただけだのではないかな?・・・

 そのうち、いつのまにかマモンのプンプンも収まって、みんなの笑い声ばかり聞こえてくるようになりました。
 
 お開きになったときも、マモンは、ちゃんと車椅子のおじさんに、いつものようにキスの挨拶をしてお別れしてました。

 にぎやかな夜になってしまいましたが、午前2時ころには静かになりました。

 めでたし、めでたし・・・、ということで、私のおしゃべりを終わります。

 また、おしゃべりをしに来るかも知れませんけど。


私の顔をアップにした写真は隠しておいたのですが、ご覧になりたい方は下のアイコンをクリックしてください。
マモンが見たとき、「まるでトラと一緒に暮らしているみたいな気分になった」と言った写真です。
Ma photo

2005年8月


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