フランスの
5月1日の風習
Le 1er mai
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フランスには、5月1日にはスズラン(muguet: ミュゲ)を愛する人に贈るという習慣があります。

スズランを贈られた人には幸運が訪れるという縁起ものです。
 スズランを贈る風習はいつできたのか?
鈴なりの花がつく植物は、すでにケルト人たちにとって、春のシンボルであり、幸せを呼ぶものと考えられていました。
「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」より ― 5月
中世には、5月1日は愛の日でした。
葉と花でつくった冠をかぶったり、
花をプレゼントしたりしました。

Les Très Riches Heures du duc de Berry

ヨーロッパに入ったスズランは森に自生する植物でしたが、16世紀になると栽培が始まります。

今日のようにスズランを贈るという風習は、シャルル9世が作ったと言われます。

1561年5月1日、幸福をもたらすとしてスズランの花束を受け取った王様はそれがお気に召され、それから宮廷のご婦人たちに毎年スズランを送ることにしたのです。

スズランは恋人たちの出会いの象徴でもありました。ヨーロッパでは「スズラン舞踏会」が開かれていました。

この日、若い女性たちは白いドレスを身にまとい、男性たちはボタン穴にスズランを付けたそうです。

しかし一般の人々がスズランを贈る風習は、19世紀末から徐々に進んだようです。20世紀になると、特にパリ近郊の人々が森にスズランを探しに行く習慣ができました。そして、摘んだスズランを街頭で売るのには、許可も得ず、所得の申請をしなくても大目に見られます。

5月1日とスズランを贈る習慣がはっきりと結びついたのは1976年だという説もあります。

 フランスの5月1日はスズランであふれる!
5月1日が近づくと、街角ではスズランの小さな花束が売られるようになります。当日になると、誰でもスズランを売って良いのだそうです。ただし、スズランは森で摘んだ根がないもので、花屋さんから100メートル以上離れた場所で売ることなどという規則があります。

子供たちがお小遣い稼ぎにすることもありますが、資金集めのために団体が売ったりもします。赤十字では、5月1日のスズランの売り上げが2番目に大きな収入源になっているのだそうです。

スズランは1907年に労働者の祭典のシンボルとなったそうです。共産党員は、毎年、街角でスズランを売ります。2002年に行われた大統領選挙では、大敗して赤字を出した共産党が大々的にスズランを売って資金調達をして難を逃れたというニュースがありました。

売られるスズランは数本の小さな花束で、300円程度の値段がついています。パリなどのような大都会では、森のスズランには希少価値が高いらしく、スズランがたった1本をセロファンに包んだだけだったりするので驚きます。

森のスズランは香りが高いのですが、栽培されたスズランも売られます。年間6,000万本のスズラン生産高のうち、85%はフランス西部のナント市がある温暖な地方で栽培されているそうです。


土曜日だった5月1日、いつものように朝市があると思って田舎の小さな町に行ったのですが、朝市は開かれていませんでした。気がつけば、メーデーでお休みだったのです。町の中は、ほとんどの店が閉まっていてゴーストタウンのよう。

ところが、スズランを売る人たちは、あちこちにいました。県庁所在地ではありますが、人口3万人にも満たない小さな地方都市。街の中心地からでも車で10分も行けば森に出てしまうので、誰が買うのだろうかと思って観察してしまいました。

どうやら、年配の男性が奥さんに売るスズランの小さな花束を買うケースが多いようです。若い人は、伝統を無視しているのか、あるいは自分で森に探しに行くのでしょうか?...
上の写真は、パン屋の前でスズランを売っているところ。スズラン売りのお嬢さんを見ている男性が2人います。「やっぱり、うちの奥さんにも買って帰らないとおへそをまげられるだろうか?...」、などと迷っているところなのでしょうか?!
森に咲くスズランは、「野に咲く花々」のコーナーで紹介しています
 5月1日にスズランを贈る風習は日本にも上陸していた
フランスでは「5月1日=スズラン」というほど定着している風習。日本のお花屋さんがどうしてこんな楽しい風習を導入しないのか不思議だったのですが、少しづつ日本にも入っているようですね。
右のお店では、スズランを5月1日に届けるという注文を受け付けていました。 ⇒
5月1日にお届け! 『すずらん』の花束
でも、スズランは5月の花ということで、母の日のプレゼントとして勧めている傾向も強いように感じました。 ⇒
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 スズランの思い出
スズランには記憶に焼きついている思い出があります。小学生の頃、北海道に出張した父がお土産に持ってきてくれたときのことです。海苔か何かの空き缶に、水を含ませたコットンに包まれたスズランがぎっしり詰まっていました。素晴らしい香りが立ちのぼってきます。親からもらったプレゼントの中で、これほど私を喜ばせたものはありませんでした。

地元の方が「東京に持ち帰るように」と持たせてくれたそうです。その前にもスズランを見たことはあったと思うのですが、これほど強い香りがあるとは知りませんでした。北海道にはこんな美しい花が咲くのだろうか?... と、遥か遠くにある土地を思い浮かべました。

その後、バルザックの小説『谷間のゆりを読んだとき、北海道のスズランと結びつきました。フランスの原題「Le Lys dans la Vallée(ヴァレーの百合)」とはスズランのことなのだ、と解説にあったからです。バルザックは英語をフランス語にしたのか、あるいは古いフランス語を使ったのか?...

『谷間のゆり』を読んだころの私は、まだ自生しているスズランを見たことがありませんでした。ひっそりと谷間咲く清純なユリのような花がスズラン、そしてそんな小さな白い花を思わせる主人公の女性。いかにも相応しいと思いました。

ところが、その後この小説の舞台になったロワール地方(バルザックの故郷)に行って驚きました。山に挟まれた谷間などではなかったのです!

「谷間」と訳された「Vallée」は、英語に置き換えればvalley。谷間の意味もありますが、大河の流域にある平地もヴァレーなのです。ロワール河流域は後者の意味でヴァレーだったのでした。訳者はあえて「谷間」としたのでしょうね。「平野の百合」などとしたらイメージが壊れますから!

フランスの森に咲くスズランは、「野に咲く花々」のコーナーで紹介しています
最終更新: 2010年5月

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