4百年前に建てられた農家の廃屋を買った友人
古い家を買っても業者に頼んで修復できますが、普通のサラリーマン程度の収入だと、できる限りのことは自分で工事します。「できる限りのこと」と言っても、かなりのところまでやってしまいます。
数年前の夏、赤ちゃんが生まれた友人がいたので、近くを通りかかったときに遊びに行ってみました。教えられていた住所の家はご主人が修復工事をしていて、奥さんと赤ちゃんは近くに借りた貸し別荘型民宿にいました。
ご主人の方は上半身はだかでセメントまみれになっていて、赤ちゃんを抱いた奥さんの方は涼しい顔をして私たちを迎えてくれました。なんだか小鳥が巣をつくっているようで、とても愛らしい光景だと思ってしまいました。
左の写真は、17世紀初頭に建てられた農家の廃屋を買った友人。パリ近郊で働いていますが、老後は生まれ故郷に住みたいと、小さな村に家を買ったのです。
家の価格が500万円くらいだったと聞いた友人たちは、みんな「ぼられたのだ!」と口をそろえて言いました。
みごとな廃屋なのです! 電気も水道も下水も通っていません。屋根はあるものの、葺き替えなければならない状態。家の中もかなり痛んでいます。庭も荒れ放題…。
でも16世紀の建物というのは価値があるし、庭には昔のハト小屋も残っているし、暖炉もある、石でできた階段も見事、台所にはチーズをつくっていたコーナーもある・・・と、魅力もある家だったのです。と言ってもフランスには魅力的な古い家がたくさんあるので、私たちには逃して惜しいような物件には見えませんでした。
彼は学校の先生をしていて休みが長いので修復できるので、定年退職したら夫婦で住めるまでになれば良いと思っているのだ、などと呑気なことを言っています。
写真に写っているはダイニングルームになる部屋です。この後、平らになっていなかった床の石を全部はがして、土台を固めてから石を並べ直したそうです。古い教会の床の石のような立派なもので、それが古い家の魅力であります。でもの厚さは10センチくらいありますから大変な重さです。どうやって動かしたのか分かりません。
凍てつく寒さの冬に見に行ったときには、彼は庭にいて、一つ一つ外した天井を支えている木を削って整えていました。まだ水道も電気も通っていないときのことです。そこまでするの?… と呆れてしまいました。
そのほか、屋根を葺き替えたそうです。庭に下水処理場もつくられました。フランスでは汲み取り式トイレは許可されませんので、下水処理場がない村では個人が処理施設をつくらなければならないのです。数年したら、欧州連合の規則で、フランスのすべての村には下水処理場ができるはずなのに・・・。草ボウボウだった庭の地ならしも済みました。屋根裏の修復は済んだとのこと。水道も引けたそうなので、後は電気や暖房の工事。屋内外の壁をきれいにする工事があります。
ともかく、話しを聞いていると気が遠くなります…。