冬の料理: シーフード A
シーフードの失敗談
Peur ... de la mer


友人たちとレストランでシーフードを食べていて、怖い思いをしたことがあります。

小さな貝を針で突っついて身を出すと、黒いはずの身が赤かったのです。どうせ食べきれないほどあるので、それはよけようと思ったのに、おしゃべりに気をとられて口に入れてしまいました。

とたんに舌をさす痛み! あわてて口から出してみると、小くて赤い、ウジムシのような虫でした。

少したつと、舌はピリピリ、唇もピリピリしてきます・・・。

正面にいた友だちに話すと、「舌を見せてご覧」と言うので見せると、「わあ! 腫れている!」と叫びます。

取り出して皿の片隅に置いた赤い虫を眺めて、「海のサソリ」などというものがあったのではないか〜・・・と、心の中で思いました。頭の部分に、ちょこんと目のようなものが付いています。
でも、せっかく友人たちが集まった夕食会の雰囲気を台無しにしたくありません。「たいしたことはない」と呑気に言って、じっとこらえました。でもピリピリは、徐々に食道の中を下がってくるのが感じます。

もしかしたら、これが最後の食事になるのかも知れない。それなら、しっかり食事してしまおう! ピリピリはするけれど、気分が悪くなるわけではないのだから。・・・などと、友人たちがおしゃべりしている間、私は色々考えました。

ともかく消毒しておいた方が良いだろう。そう思って、牡蠣の貝殻にレモンを絞って飲んだり、シャンペンをたくさん飲んだりしました。でもピリピリ状態は消えません・・・。

胃の中にまで下がったら、猛烈な痛みに変わるのでしょうか?・・・ 真夜中に危篤状態になるのも面倒なものです。医者に聞かれたら、何を食べたのか見せなければ、と赤いサソリをちぎった紙のナプキンに包みました。


シーフードを専門にしているレストランなら知識があるはず。ウエートレスなら、こんな場合のことを知っているかも知れない・・・。

通りかかったウエートレスに、小声で「ちょっと問題があるのですが・・・」と言ってみました。
 「え?!」と驚いた様子。
 「この貝の中から、これがでてきたのです・・・」と、海のサソリを見せました。
 「ああ、唐辛子ですよ。貝を煮たときに、取り出せなくて貝の中に残ってしまうことが時々あるんです。この貝はとても小さいから」

「聞いてみて良かったわ」と、安心した私は言いました。でも「ハハハ」とは笑わないまでにも、余りにもあっさりしたウエートレスの態度。ハハハと笑われても仕方がなかった愚かな私ではありますが、「これが最後の食事になるかとも思っていたのよ・・・」と、立ち去るウエートレスに言いたい気もしました。

シーフードの盛り合わせでは、牡蠣や大きな貝などは生ですが、それ以外は調理しています。唐辛子が残ってしまうこともあるのでした。

でも、私のようなケースが時々あるなら、シェフは唐辛子を四角に切るとかして、あきらかに虫ではないという姿にしても良いのではないかと思います・・・。


勘定書きを持ってきたウエートレスに友人が言いました。
 「唐辛子の追加料金が入っていませんよ」
 「それはサービスしておきました」

とんだ食事でした。友人たちには散々笑われてしまったし、ウエートレスの方も調理場の仲間同士で大笑いしたと思います。ドジな私でした・・・。
2003年12月
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