異常な暑さだった2003年の夏
今年(2003年)の夏は雨がほとんど降らなくて高温が続きました。最高気温が40度にもなる異常な猛暑だったのです。
ブドウは痛めつけられた方が良いワインになると言われるので、夏に入ったばかりの頃は、今年のワインは素晴らしいだろうと期待されていました。でも暑さと乾燥した日が続くにつれて、これくらいみごとに厳しい夏を経験したワインが極上のビンテージになるとは思えなくなりました。
ブドウの収穫は、フランス各地で、例年より2週間から1カ月も早くなりました。こんなことは100年くらい前にあった程度なのだそうです。
ブルゴーニュでも、いつもなら9月のはずのブドウ収穫が8月中旬から始まりました。
ワインはどうなる?…
9月初めに、絞りたての白ワインをブルゴーニュ南部にある農協で買って飲んでみました。ボージョレー・ヌーボーはある程度飲めるようになった11月に解禁されるのですが、こんな発酵途中のワインも地元なら手に入ります。
買ったワインをボトルに詰め替えて冷蔵庫に入れておいたら、発酵の勢いでセンが飛んでしまって、そこらじゅうが水びたしになってしまいました。こんな発酵途中のワインをたくさん飲むとお腹をこわしてしまうので、こぼれてしまったのは惜しくはありません。
さて試飲してみると、砂糖を入れすぎたジュースのような感じ。暑さのために甘みが特に強いブドウになったようです。
フランスのワイン好きが当たり年とするのは、ワインセラーに寝かせておいて、味や香りが高まってくるワインとなるミレジームです。長い年月寝かせておけるには酸味が必要です。今年は糖分が多すぎて酸味が足りないので、長く寝かせておけるワインにはならないでしょう。
ところが日本から届く便りに、「今年のワインは特別に当たり年だそうですね」と書いてくる人が多いので驚きました。そのように日本では宣伝されているらしいのです。猛暑のおかげで生産量は例年より3分の1は減ったというのですから、海外向けには例外的な当たり年だとPRして高く売るようにすることにしたのでしょうか?・・・ あるいは、夏の初めの好天気だったときの報道が、そのまま訂正されずに残ってしまったのでしょうか?・・・
親しいワイン農家の人たちと今年のワインの出来について聞くと、本心を話してくれました。「悪条件が全部そろった」と、とどこでも語ります。春先には氷点下になったし、オマケに雹が降った、そして夏にはものすごい猛暑がやってきた! と言う年だったのです。
ブルゴーニュでのブドウ収穫は9月の風物詩なのに、猛暑で8月末には収穫が終わってしまったのも異常なこと。物心つくころからワイン醸造に携わっていたという70歳になる農家のお爺さんは、こんな年を経験したのは初めてだと言っていました。
機械でブドウの収穫をしているので、暑さが弱まった真夜中を過ぎから収穫を始めることができたと話す農家もありました。機械なら明かりをつけて夜でも収穫できるけれど、手で摘む農家ではどうしたのだろう?と言います。あんな暑さの中でブドウを収穫していたら、その場でブドウがだめになってしまう・・・。
それに手摘みで収穫するところでは、収穫の時期が早まったために大変だったとか。季節労働者を雇うわけなのですが、もう収穫をしなければダメだとなったときに、手配していた季節労働者たちは夏の休暇でいなくなっていた人もいたと言うのです。
それぞれの農家が、何とか切り抜けたという苦労話しをしてくれました。 |