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お菓子屋さんのショーウインドーからクリスマスケーキの姿が消えるころ、「ガレット・デ・ロワ(galette des Rois)」という名前のケーキが並ぶようになります。 内部リンク: クリスマスケーキは薪の形: ブュシュ・ド・ノエル これはキリスト教の祭日であるエピファニー にちなんだケーキ。 内部リンク: 「エピファニー (Epiphanie)」
「ガレット(galette)」とは円形のお菓子、「ロワ(roi)」とは王様のこと。つまり「ガレット・デ・ロワ(galette des Rois)」は「王様のケーキ」という意味になります。エピファニーにちなんだケーキだと知るまでは、フランスを統治していた王様にまつわるお菓子なのかと思っていました。 キリストの誕生を祝って東方から来た3人の王様(rois mages)にちなんだお祭りがエピファニー。なるほど、このケーキの名前となっている「ロワ(王様)」は「des Rois」と複数形になっています。 エピファニーは1月6日。ガレット・デ・ロワは、正式には1月8日に食べることになっているそうですが、クリスチャンでもない限り、フランス人たちは食べる日にちにはこだわっていないように見えます。 新年が明けると、皆でガレット・デ・ロワを分け合って食べる集まりが催されたりもします。これを一緒に食べるのは、ゲームの要素もあって楽しいのです。
一つは、紙でつくった王冠。 もう一つは食べてみないと分からないのですが、ケーキの中に入っている小さなフェーヴと呼ばれる小さなもの。 この二つがゲームのような楽しみを与えてくれるのですが、そのことは下で説明します。
ガレット・デ・ロワは丸い形をしたケーキ。パイ生地にアーモンドクリームが入っているものが一般的ですが、南フランスではブリオッシュ・タイプ。最近では、チョコレートが入っているものも流行ってきているとか。 |
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コルシカ島で売られていたガレット・デ・ロワ。両方のタイプがありました。 ブルゴーニュではブリオッシュ・タイプを見たことがないような気がします。 |
その名が示すように、昔は乾燥したそら豆を入れたそうですが、今では陶器製や金属性の飾りがフェーヴとして使われています。 切り分けたガレットに、フェーヴ(fève)が入っていた人は王様となります。女性なら王妃様。 王様なった人は、ガレット・デ・ロワについている王冠をかぶり、自分の好きな人を王妃様として選びます。王妃様なら、もちろん王様を選ぶわけです。そしてキス。 その場にいる人たちから、「王様ばんざい!」、「王妃様ばんざい!」と叫んでもらいます。 ところで、下の写真のように切り分けたところにフェーヴがあると、フェーヴをあげたい人に配ることもできてしまうわけです。それでは不公平だと思われませんか? ご心配いりません。そういうことを避ける方法もあるのです! 集まっている人たちの中で一番の年少者(たいていは子ども)がテーブルの下にもぐります。そうして、ガレットを切り分ける人が「これは誰の?」と言うと、テーブルの下にいてフェーヴが入っているかどうかなどは全く見えない子どもが誰に配るかを言うのです。 そのほか、ガレット・デ・ロワには人によって風習もあるようです。王様になった人は翌日にガレット・デ・ロワをみんなに振舞う。それから、ガレット・デ・ロワを切るときには、一人前を余分に残しておく。これは、「貧しい人のため」というキリスト教的な考えのようです。誰か予期していなかったお客さんが来たときにあげられるということになります。 王様になれる遊びがあるので、ガレット・デ・ロワは新年のお祭り気分を盛り上げるケーキです。年が明けると、仕事仲間や趣味のサークルなどが、ガレット・デ・ロワを食べるための集まりなどを催されます。村役場などでもガレットを用意して住民たちにふるまったりもします。新年会というところでしょう。 ところで、ガレット・デ・ロワは、デザートとしてだけではなく、朝食のときに食べるのも私は好きです。この時期にしか食べられないケーキなので、1月には極力食べてしまいます。何回も食べていると、必ずフェーヴは当たります!
ガレット・デ・ロワがなぜ食べられるようになったかには色々な説があるので、どれが本当なのかは分かりませんが、フランスで一般的な説をご紹介しておきます。 すでに古代ローマ時代、12月末から1月にかけてのサトゥルヌス祭にケーキを切り分けて、そら豆が入っていた人が饗宴の王になるという習慣があったと言われます。 カトリックの世界でエピファニーと結びつけた風習となったのは4世紀末。 フランス革命期には「ロワ(王)」などという名前がついたガレットを食べる習慣があるのはケシカランと、この日を「サン・キュロットの日」にすることにしましたが、すぐに無視されてしまいます。 ところで、そら豆に代わって陶器のフェーヴが使われるようになったのは19世紀は半ばに過ぎません。
フェーヴ(fèves)をコレクションしている人も、たくさんいるのだそうです。もっともフランスにはコレクションが好きな人が多いので、フェーヴを集めている人がいても全く不思議はありませんが。 内部リンク: 数字でみるフランス人 > コレクションを趣味にしている人がどのくらいいるか |
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高級なフェーヴが入っているガレットもあります。コレクターの人たちは、限定品などを集めているようです。 ガレット・デ・ロワのためのフェーヴは、毎年およそ8,800種類も作られているのだそうです。フェーヴの生産業者も、ケーキ屋さんも、コレクターを意識しているのでしょう。 ガレット・デ・ロワが売られるのは、早くて年末から、せいぜい1月いっぱいの間です。日本でお彼岸に「おはぎ」を食べるのと似ているかも知れません。最近は「おはぎ」が一年中買えるようになりましたが、このガレット・デ・ロワは、この時期を逃したら買えないように思います。 そんなふうに一時期しか食べないケーキなのですが、ガレット・デ・ロワは、1年間に約6,000万個も生産されているようです。これはフランスの総人口と同じ数です!
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ガレット・デ・ロワにはフェーヴが入っていて、切り分けられたケーキにフェーヴが入っていたら王冠をかぶって「王様(あるいは王妃様)ばんざい!」と祝福されるのが伝統なのですが、その遊びがないガレット・デ・ロワもあります。 毎年、どこかの県がフランス大統領のためにガレット・デ・ロワを作ります。1975年からの習慣なのだそうです。例えば、2010年に大統領に贈られたガレットは、直径1.2メートル、重さ30キロ。 外部リンク: La galette des rois pour l'Elysée est normande (2010-01-05) ところが、大統領自ら切り分けるガレットには、フェーヴも入っていないし、王冠も用意されていないのだそうです。共和国の大統領官邸での行事なのに、誰かがフェーヴに当たって王様になってしまってはマズイということのようです。ガレット・デ・ロワの「ロワ」とは、国を治める王様ではなくて、東方の3博士のことなのですが、同じ単語なので、フランス人でも混同するからという配慮からのようです。 |
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内部リンク: フランスの祝祭日一覧 |
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作成: 2003年10月 最新更新: 2010年10月 |
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