ブドウの収穫

Vendanges

 ブドウの収穫方法: 手摘みのブドウ収穫
目次: 心浮き立つブドウ収穫期
ブドウの収穫方法: 機械でのブドウ収穫 | 手摘みのブドウ収穫 | 手摘みと機械収穫の違い
前のページで書いたブルゴーニュ南部での機械によるブドウ収穫を見学した後、トップクラスのブルゴーニュワインが生産される地域でブドウの収穫を見ました。もちろん、こちらは人間の手でブドウの房を切り取っています。


ブルゴーニュ地方のワインマップ

ロマネ・コンティの収穫は終わっていた...


コート・ドールでは、あの有名なロマネ・コンティの収穫を見たい!ということになって、畑に向かいました。

ところが、ロマネ・コンティの畑ではもう収穫が終わっていました。ほんの1日か2日前に、さっさと終えてしまったらしいのです。

ブドウの木には房の一つ残っていなくて、畑には収穫の名残もなく、実にすっきりときれいなものでした...。

まだ周辺ではトラクターなどが行きかって、さかんに収穫をしているのに...。

収穫を終えて引き上げるトラクターもありました。最後のブドウを摘んだ車には飾りつけなどして、みんなはしゃいでいるので分かるのです。

右の写真をご覧ください。大きな熊のぬいぐるみを乗せて、運転手は女性を膝の上に乗せたりしています! きつい仕事が終わって、さぞ嬉しいのでしょう。

私が以前に見た、こんな収穫を終えたトラクターの飾りは、木や花で飾っていたのに、こちらは現代風なのでしょうね。

手摘みの収穫隊との出会い

一面に広がるブドウ畑のあちこちには、車や人影が見えます。私たちは車を少し走ったところで、やはり超高級ワインとなるブドウ畑で収穫が行われている所へ向いました。

始めに立ち寄った畑では、収穫の人たちがチャーターしたらしいマイクロバスに乗って、少し離れた別の畑に行くところでした。この辺りのワイン農家では、バラバラに散らばった土地を持っていることも多いのです。

ブドウを切っているところは見せられないので、ブドウを切るハサミを見せてもらいました。

どうということのない、普通の園芸用ハサミなのですね。

そばから、昨日は間違って指を切ってしまったのだ、などと言う人もいました。包帯した指が痛そう...。

「となりの畑では、まだ収穫しているから行ってごらん」と指差された方向に歩いて行きました。


クープ、クープ、クープ、ク〜〜プ!

こちらも賑やかに収穫していました。突然現れた私たちに陽気に話しかけてきます。

この20人足らずのチームでは、ポーランド人が半分くらいを占めているそうです。毎年来ているらしく、フランス語も流暢に話していました。でもフランス語が全く通じない人たちもいるので驚きました。

ブドウの収穫は労働がきついし、賃金は低いので、フランス人は余りやりたがらないのです。ブドウ収穫のアルバイトなどをするよりは、失業保険をもらっていた方が良いなどとも言われます。

畑に向う途中で、友達のワイン農家でブドウ収穫の手伝いをしたことがある私の友人は、収穫隊を見たときに「クープ、クープ、ク〜〜プ!」などと言っていました。

収穫チーム長が、畑で繰り返していた掛け声なのだそうです。クープ(coupe)とは「カットする」と言う意味。「切って、切って、切りまくれ〜!」という感じ、つまり「休まないで働け!」ということなのです。その声を耳に聞こえてくる音楽のように働いたのだそうです。

働いている人が私たちとおしゃべりしていたときも、幼い子どもが覚えてしまった言葉のように「クープ、クープ、ク〜〜プ!」と歌うように言うので笑ってしまいました。

もっとも、厳しく働かせるところでは、切り取り作業の監視人がいて、さぼらないで切れという具合に「ク―プ、ク―プ!」と後ろから季節労働者たちを追い立てるのだそうです。


ブドウ収穫の役割分担

ブドウの収穫はチームワークで行われています。
ブドウを摘む人は摘んだブドウをバケツなどに入れます。

腰をかがめての作業になるので、とても辛いそうです。

ブドウは背負い子役の人のカゴに入れられ、それから車で運搬されるケースに移します。

このブドウを背負う人の役は重労働なのだそうです。今はプラスチック製の容器になっていますが、昔は木製の桶。空の状態でもすでに重かったでしょうね。
背負い子役の人は、ブドウが集まるまで休憩するような時間があるわけです。でも重いし、この最後のトラクターにザッとあけるときのタイミングも難しいので、決して楽な役割ではないのだそうです。カゴをあけるときには、下手すると、その勢いで自分も飛び込んでブドウをつぶしてしまったら、とんでもないことになりますから!


たくさん食べて、飲んで、そしてたくさん働く

このチームの農家では、みんな農家に寝泊りして、食事も農家が出してくれるのだそうです。食事もおいしいし、ワインも飲み放題。「それはいいね」と、私と一緒にいた友達は言っています。

最近では、収穫にくる季節労働者の世話までするのは大変なので、ホテルに泊めたり、食事も自分でつくったりはしない農家も多くなっています。

「庭の生産物がでるんだ」なんて、うれしそうに言っている人もいました。野菜だけではなく、飼っている家禽類の肉も出るのだろうか、などと私は思いました。これだけ労働してお腹がすくであろう人たちが、野菜のおいしさに感激するはずもないので!

ともかく、親切な農家で働くか、ただこき使う農家で働くかの差は大きいようです。私がであったあるアフリカ人は、パリに留学していたときに収入稼ぎだけのためにしたブドウ収穫アルバイトはきつかったと、本当に辛そうに語っていましたから。

そんな話しをしてくれたのは年配の人でした。今では、いくら農家が季節労働者に手抜きをするにしても、余りにもこき使ったら誰も来てくれなくなるでしょう。


もったいないような話し...

収穫が終わった畑をみると、かなりブドウの房が地面に落ちていました。

ブドウはまだ新鮮なものでした。ワインにするには相応しくない房として捨てられたのでしょう。

収穫する直前に、できすぎたブドウを選別して切り落とすこともあると聞いています。原産地統合制度の品質保証では、畑の広さによってつくられるワインの量の上限が定められています。それを守らないことがばれたら、銘柄をつけて販売することは禁止されるという厳しい規則なのです。

この捨てられたブドウが、道のそばに片付けられて山積みになっているところもありました。それを見ると、「こんなに!...」と、もったいない気がしますが、それだけに高い品質のワインができるのでしょうね...。

天候が悪くてブドウので出来が悪い年などには、不合格になるブドウの量も多くなります。高級ワインを作る所では、さらに醸造所に運んでからもベルトコンベアーでブドウの選別を行っています。


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次のページでは、機械で収穫されたブドウと、
人間の手で収穫されたブドウが、どのように違うかを写真でお見せします。

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