Qui suis-je ?
私とフランスの関わりについては、 著書『フランス田舎めぐり』に書いたことを引用させていただきます。 |
『フランス田舎めぐり ~ 田園で過ごす癒しの旅のすすめ』 より JTBパブリッシング, 大島 順子著 |
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どうしてフランスに住むようになったのかと聞かれることがある。パリではなく、ブルゴーニュに住んでいることも不思議だと言われる。 「フランスに住んでいらっしゃるんですか! パリに?! いいですね。ファッションの国! 芸術の国!…」 そう続けて言われてしまうと、フランスの田舎が好きなので…とは切り出せなくなってしまう。 私がフランスに魅せられたのは、20年ほど前、フランス語を勉強するためにブルゴーニュで一夏を過ごしたときだった。短期留学先としてブルゴーニュ大学を選んだのは偶然だった。パリは観光旅行でも行けるので候補にはせず、水泳はできないので海岸部は避けた。何となく残ったのがブルゴーニュだった。 そのとき私は、ディジョン市に住んでいるフランス人家庭にホームステイした。中世を彷彿とさせる旧市街のある美しい町である。ブルゴーニュでは最も大きな町なのだが、人口は15万人に過ぎない。町を出ると、すぐに農村が広がっていた。 |
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ディジョンの街なみ |
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「生きることを楽しむ国」と言われるフランスだが、ブルゴーニュ地方では特にその傾向が強い。日常生活を楽しむフランス人たちを見ながら生活するうちに、日本の社会は、本当の豊かさをなおざりにしているように思えてきた。当時の日本は、高度成長期が始まった時期にあった。しかし日本人は、経済的な発展ばかりを優先して、個人の生活をないがしろにしていると感じたのである。 フランス人は、心の豊かさを追求して生きている。お金をかけずに楽しむ術もあると思う。休日を過ごすにも、親しい人たちの間で開く家庭での食事会、農村や森を散策するだけで楽しめるのだ。食事会では、長い時間かけて、おしゃべりも楽しむ。昼から始まった食事が、真夜中まで続くこともある。特別なことはしないでも、彼らは充実感を味わえるのだ。日本のように、お金を散財しないと贅沢をした気分になれないのとは対照的だ。 ステイ先の奥さんは、私を車に乗せて何度も田舎に連れて行ってくれた。私が通った大学でも、外国人留学生のために、週末に農村のボランティア家庭を訪れて昼食をご馳走になるという企画もあった。「田舎で過ごす日曜日(ディマンシュ・ア・ラ・カンパーニュ)」という言葉も、このときに覚えた。 東京に住んでいた私は、フランスの田舎の美しさに魅せられた。草原に咲いている花々は、花屋さんの花よりも美しかった。牧場で牛やヤギを見て感動もした。中世そのままの姿を残す美しい村を散策するのも楽しかった。ステイ先の家族との森の散歩から帰ったとき、出されたキール酒をジュースだと思って、喉が乾いた勢いで何杯も飲んで卒倒しそうになったことも思い出す。 私はホームステイした家の人々と親しくなり、彼らの友人は私の友人になった。その友人の友人も、私の友人となった。いつでも泊めてもらえる部屋があったので、ブルゴーニュには行きやすかった。フランスに行くのが一年に1度が2度になり、3ヶ月滞在になり、1年滞在になった。そして10年ほど前からは、ブルゴーニュの農村に住むことになった。 日本には帰る田舎がなかったので、私はブルゴーニュを私の故郷にしたのである。そしてフランスも隅々まで旅行するようになった。名所旧跡の観光、食べ歩き、ワイン飲み比べ、野原の草花を使った自己流生け花が私の趣味となった。 どんなことでも、好きなことをしていると、道が開けるものだと思う。ある研究所から依頼されて、フランスの民宿に関する報告書を書いたのが、私がフランスに住めるようになるきっかけとなった。その後、フランスの農村ツーリズムや福祉政策を日本に紹介したり、日本人視察団の受け入れをしたりするのが私の仕事になったからだ。 |
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