Salutations à la française

(2) 挨拶するときには、思い出さなければならないことがある


(1) イントロ | (2) 挨拶するときには、思い出さなければならないことがある
(3) 何回キスするか? | 
(4) 挨拶に戸惑うのは日本人だけではない

 フランスで人と会ったときには、日本にはない複雑さがあります。まず初対面の人とどう挨拶するかの問題はあるのですが、親しくなってからも、その人とはどういう挨拶をする習慣ができたかを覚えておかなければなりません。

 相手の名前を覚えていなければならない、というのはどの国でも同じ。とは言っても、フランスでは何かにつけて名前を加えるので(ボンジュール、誰々さん のように)、しっかりと覚えておく必要度は高いです。

 でも、フランスでは、その他に、覚えておかなければならないことがあるのです。めったに会わない人だと、「この人とはどう挨拶する仲だったかしら?」と一瞬考えてしまうことがあります。


 相手を呼ぶ「あなた」はどうだったか?

 英語の「you」に相当するフランス語は二つあります。親しい人に対して使う「tu」と、よそよそしくなる「vous」。親しい人でも複数になれば「vous」なので、問題は解決。でも、一人の人に話し始めるときには「tu」と呼ぶか、「vous」と呼ぶかを選ばなければなりません。

 いつもは「tu」と呼んでいた人に「vous」を使ってしまうと、問題が発生します。相手に対して腹を立てていて、わざわざよそよそしく「vous」と呼んだと思われてしまうからです。

 思い出さないときは、相手が何と言うか待ちながら、「あなた」を入れた文章をしゃべるのを避けたりしています! これは初対面の人に対しても同じ。相手が何と言ってくるかによって合わせるというのが無難。ただし、目上の人の場合は「vous」にしておいた方が無難です。慣れなれしく「tu」と呼ぶのを嫌うフランス人もいますから。

 言葉の問題は、複数の公用語を持った国では、さらに複雑だと思います。「この人とは何語で話すのだったっけ?」というのまで思いださなければならないわけですから! スイスを旅行したときには、当然フランス語で話してもだいたいは通じるのだろうと思っていたのですが、全く分からないドイツ語圏の人たちも多かったのでした。


 その人とは握手をするのか、頬を寄せ合ってキスの挨拶をするのか?


頬の高さを同じにする必要があるので、
背が高い人は膝をかがめます。
膝をかがめながら近づいて来られると、
そうする必要が私も
つい膝を曲げてしまうのが直っていません・・・。
 もう一つ、同じ理由で注意しなければならないのは、挨拶の仕方は握手かキスかの問題です。いつもはキスの挨拶をしていた人に握手の手を差し出したら、よそよそしくなってします。

 男性同士の挨拶は楽ですね。キスの挨拶をするのが習慣になってい人は少ないので、握手で済ませることができるからです。

 人が大勢集まった席で、いつもはキスをしていた女性に握手をされたら、そうされた男性は「彼女は何かに腹を立てているのだろう」と言っていました。

 フランス人だって忘れることがあるはずだと私は思ったのですが、やはり何かしこりがあった後らしくて、そっけなく握手をした女性は、再びその人に会ったときには、「さっきは色々な人と挨拶していたので、そっけなく挨拶してしまってごめんなさい」と言っていました。

 この区別もと同じで、相手の出方を見てから、手を出すか、顔を出すかを決めることもできます。相手も迷っている場合だと、「どっちにしようかな?」という中途半端な体制を見せてくるので、そのときの状況によって決めます。

 女性が男性を相手にした場合は楽です。女性にキスをされていやがる男性はほとんどいないわけですから、相手が抱き合う挨拶をしたがっているように見えたら、キスと決められます。

 ただし、これもと同じで、目上の人(仕事関係で上の人)とか、それほど親しくない人にキスの挨拶をしたら顰蹙をかうことがあると思います。


 キスをする相手の場合には、何回キスをするのか?

 抱き合って挨拶する場合には、両方の頬に1回づつ、つまり合計2回のキスをするというのが多いです。でも、左右、さらに左右と、合計4回のキスをする人も多いです。その他、3回とか、1回しかしないというのもあります。

 これは間違えても大した問題にはなりません。顔を引っ込めようとしたときに、相手が頬を出してくれば、もう1回なり2回なりをすれば良いからです。「ああ、間違えた」などという顔をすると、「4回よ」などと言ってきたりする人もけっこうあります。相手の方が、しようとしていたキスを引っ込めることもあります。

 キスの数は地域によってかなり決まって来るように思います。それで、相手の出身地を思いうかべれば、何回キスするのかを思い出したりもします。キスの回数は個人的な好みで決めている場合もあるようですが、住んでいる地域でキスの挨拶をする回数に慣れるので、例えば4回キスをする人が2回しかしないのは物足りないようです。

 キスの回数が違う人同士が挨拶するにはどうするのか? 数が多い方が優先されるという鉄則があると、私は観察しています。私が住んでいるところでは2回が普通なのですが、シャトー巡りで有名なロワール河流域地方に行ったときには、完全に4回の地方でした。ついいつものように2回しかキスをしなかったら、「ブルゴーニュの人はケチだから!」などと冗談を言われてしまいました。こういうことを言うのは男性です!

 フランス人たちでも、何回キスをするのかにとまどっています。県別にアンケート調査をとった統計を出しているサイトがありました。次ページでご紹介します。


 フランス式挨拶を避けることが必要なときもある

 抱き合ってする挨拶は、必要以上に相手に近づいてしまいます。それで、「今日はキスの挨拶ができない」と相手に断って握手に代えることもあります。

 近づいては失礼にあたる場合。つまり、風邪をひいているとか、汗ばんでいるときなどのような場合。相手に断って、それでも相手が「かまわない」と反応すれば、いつものようにキスの挨拶をするということもありえます。

 握手の挨拶も避けるケースがあります。庭いじりをしていたりしていて手が汚れているなどの場合です。このとき、フランス人たちがする方法が面白いと思いました。

 手のひらが汚れているわけなので、手のひらを下に向けて相手に手を差し出すのです。そうされた人は、手のこうや手首を握るようにして握手のマネ事をします!
 2008年9月

(3) 何回キスするか?
フランス式挨拶の仕方 目次 
(1) イントロ | (2) 挨拶するときには、思い出さなければならないことがある | (3) 何回キスするか? | (4) 挨拶に戸惑うのは日本人だけではない 

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