|
||||||
目次: |
|
|||||||
ヴァカンスの習慣ができたのは戦後 フランスで法定年次休暇制度が定められたのは1936年。年に15日間の休暇でした。戦時中ですから休暇を楽しむどころではありませんが、戦争が終わって平和な時代になると、ヴァカンス・ブームが爆発します。 その当時の夏のヴァカンスといえば、南フランスの海岸に行くのが人々の夢。でも海水浴場はリゾート化しているので、経済的に豊かでないと長い休暇を過ごせません。 そこで政府は、誰もが安い休暇を過ごせるように、農村に長期休暇を過ごせる宿泊施設を整えたのです。あちこちに安い料金で利用できるファミリー・ヴァカンス村がつくられ、農家の使わない建物を利用した貸し別荘などに補助金が与えられました(注)。 ただ「休みを取れ」と奨励している何処かの国とは違いますでしょう? |
|||||||
|
|||||||
戦後は小型自動車も普及し、容易にヴァカンスにでかけられるようになった |
休める体制がある フランスでは、休暇が取りやすいと思います。みんなが休暇をとれば、遠慮して取らないということはありえません。それに、休みを取った人の業務はストップさせてしまうので、仲間に迷惑をかけるということもありません。 みんなが休暇を取ってしまっても、会社は存続できるものです。そう思ったのは日本にあるフランス企業で働いたときでした。フランス人の社長は夏に1カ月くらいフランスに帰ってします。本国の方も業務がほとんどストップなので、夏のオフィスは静かなものでした。もちろん日本の取引先からは叱られましたが、それでも会社つぶれませんでした。 代理がいなくてはならない仕事についている人、例えば医師や看護婦、郵便配達のようなポストの場合は、フリーで働く人たちが雇われます。定職を持つより自由があること、臨時雇いだと報酬が良いことなどのために、そのような働き方を好む人たちがいるのだそうです。 夏に怪我して入院したことがあるのですが、臨時雇いの医師や看護婦の数がたくさんいるのが分かりました。 「だから夏には病気や怪我をするべきではないのよ」と友人に言われましたが、こればかりは時期を選ぶわけには行きません!
働いてばかりいると死んでしまう ?! この春、ブルゴーニュの誇るシェフが自殺してしまいました。ミシュランで3つ星にランクされていたベルナール・ロワゾーです。 後になって、彼には仕事や私生活に問題があったことが分かってきましたが、真っ先に流れたニュースでは、自殺の原因は働き過ぎでした。人並みに休暇をとっていなかったというのです。過去1年間に2週間だったか、3週間だったか忘れましたが、ともかく休暇を「ほとんど」とっていなかったというのです。 日本人だったら、そのくらい休暇をとっていたら充分ではないかと思うのではないでしょうか? でも、そのときのニュースは、ちゃんと休暇をとっていないと死んでしまうと結論するような感じでした。 フランスでは、会社員が病欠をとるときには、疾病保険が給料を保証します。つまり給料は差し引かれるけれど、疾病保険が補ってくれるのです。それで休みやすいということもあるようです。 ドクターストップがかかると病欠できます。ノイローゼというか意気消沈というか、ともかく働きすぎたりして元気がなくなったときには仕事を休みます。教員をしている友達の中にも、そんな状態だから南フランスに行って静養するのだという人がいました。日本だったら、遠くまで旅行できるくらい元気なら働けと言われてしまうでしょう。そんなことくらいで病欠できるなら、みんな癒しの旅に出てしまうのではないでしょうか? |
||
ヴァカンス旅行ができるようにする配慮 大きな会社などでは、従業員にヴァカンス・クーポンなどというのも発行します。社員がヴァカンス積み立てをして、それに会社が上乗せするもので、宿泊施設などで使えます。 自治体は、特に親が旅行に連れて行けない子どもたちのために、林間学校のような旅行を企画します。建物は老朽化しているとはいえ、お城が林間学校の宿泊施設になっているのをよく見かけます。うらやましい限り。でも子どもたちは、そんな林間学校に行くのは貧しい家庭の象徴のようで喜ばなかったそうですが、最近は人気が出てきているそうです。しかっているばかりいる親と一緒に旅行するよりは、その方が楽しいからでしょうか? ところでフランスの統計では、ヴァカンス(vacances)旅行とは連続4泊以上の外泊を指します。この定義に従った統計では、フランス人の6割が年に1度はヴァカンス旅行しているそうです。政府は、残りの4割の人々がヴァカンス旅行をしていないことを問題にして、対策を練っています。 赤ちゃんも、病人も、寝たきりのお年寄りもいるし、都会の人が休暇を過ごしたいと憧れるような田舎の家に住んでいる人もたくさんいるのですから、ヴァカンス旅行をするのが6割でも悪くはないと思うのですが・・・。 私の交友関係を思い浮かべると、ヴァカンス旅行をしない人というのは、田舎に住んでいるお年寄りで、旅行など興味がないという人たちです。実際、パリなどでは、9割の人がヴァカンス旅行をしているのです。 |
||
夏の都市につくられるビーチ ヴァカンスが必要なのは、ストレスが多い町に住んでいる人たちです。 ブルゴーニュの行政中心地ディジョンでは、何年か前から、夏なのに町に残っている人たちのためのイベントを行うようになりました。 パリでも、新しく市長になったドラノエ氏の粋なはからいで、セーヌ河のほとりにパリ・ビーチがつくられるようになりました(右の写真)。パリのど真ん中にできるビーチ。パリとは思えない風景でしょう? 昨年初めてつくられたパリ・ビーチはマスコミでも話題になって人気をあげ、訪れた人は200万人くらいいたそうです。 2003年のパリ・ビーチは、7月20日から8月17日までとなっていました。 3000トンの砂が運び込まれ、椰子の木で雰囲気も盛り上げられます。デッキチェア、ビーチ・パラソル、ハンモックなども設置。子どもたちの遊び場、ペンタンク広場、木陰の図書館などもあり、コンサートなどのイベントも行われます。 パリには都会特有の夏の不愉快な暑さがあるので、とても良いアイディアだと思います。 |
||
追記: その後、パリ・ビーチは人気を呼んで全国に広まりました。こちらブルゴーニュ地方でも、夏には南国的なビーチが作られています♪ |
||
夏にはビーチとなるディジョン市のキール湖 この人造湖にも名がついたキール市長については、こちらでも少し書きました。 |
||
作成: 2003年7月 更新: 2009年12月 |
||
Copyright © Bourgognissimo. All Rights Reserved. |