消費文化の肩を担ぐサンタクロースに反発したブルゴーニュ
カトリックの敬虔な信者からすれば、聖ニコラウスが商売のために利用されるのはおもしろくないはずです。法王もサンタクロースに反対の表明をします。
事件がおきたのは1951年。フランス東部にあるブルゴーニュ地方の行政中心地ディジョンでした。
12月23日、サン・ベニーニュ大聖堂の前でサンタクロースの人形が火あぶりにされたのです!
聖職者たちの主張は「サンタクロースの嘘と誤解を招く作り話に抵抗するため」とのこと。子どもたち250人を集めて目の前で行われたそうです。
余りにも残酷...。フランス中で大騒動になったようです。「ディジョンにおける火刑判決儀式」などというタイトルを付けた新聞記事もありました。この言葉は異端審問の用語です!
サンタクロースを火刑に処した宗教関係者たちの言い分には、こんなのもありました。フランスの公立学校では宗教色を抜いた教育を行うことが義務付けられています。それで、フランスの伝統的なクリスマス飾りであるクレッシュは学校に飾れません。ところが、サンタクロースは学校にやって来ても良い。それではおかしいのではないか、という不満です。
「サンタクロースはけしからん」と怒りたくなる信者の気持ちは分かりますが、子どもたちのヒーローを火あぶりにするのはちょっと酷すぎる...。カトリック信者の中でさえ批判的な人もあったそうです。
ところがサンタクロースの処刑があった翌日、つまりクリスマスイブの夕方、ディジョンの街に奇跡が現れました!
市庁舎の屋根の上にサンタクロースが姿を現われたのです。サンタクロースが復活したというわけです!
市長の粋な計らいでした。当時のディジョン市長はキール氏。教会参事会員でもあった聖職者なのですが、豪快な人だったので色々なエピソードを残しています。
ディジョンの事件に触れたレヴィ・ストロースの記事:
Lévi-Strauss, Claude : « Le Père Noël supplicié»Les
Temps modernes, mars 1952, p. 1573-1590
サンタクロースの秘密 クロード レヴィ=ストロース (著), 中沢 新一 (著, 翻訳) |
このことが起こりとなって、ディジョンの市役所の屋根には、毎年12月24日にサンタクロースが登場します。今では技術もあるので、サンタクロースも高い塔から降りてきたりするパフォーマンスを披露。ディジョン子たちの人気を集めています。
完全に定着したサンタさん
サンタクロースに手紙を送るための郵便ポスト |
今日のフランスでは、クリスマスにサンタクロースはなくてはないらない存在になりました。ハロウィーンの方はなかなかフランスには根付かないだろうと言われているのですが、今後どうでしょうか?...
フランスのサンタクロースは「ペール・ノエル」と呼ばれて、「サン・ニコラ(聖ニコラウス)」とは呼ばれません。
聖人と消費社会が作り出したサンタクロースを区別するからなのでしょうか? いつ、なぜ「ペール・ノエル」と呼ばれるようになったかについて説明している資料は見つけることができませんでした...。 |